診療コラム

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下痢が止まらないときの対処法:原因別のセルフケアと受診目安

下痢が続くと、脱水や体力低下が心配になり「このまま様子見でいいのか」「何をすれば早く良くなるのか」と不安になりがちです。

この記事では、下痢の危険サイン、続く期間の目安、便のタイプ別の見分け方、原因の整理、今日からできるセルフケア、市販薬の使い分け、受診のタイミングと検査内容までをまとめて解説します。

まず確認:今すぐ受診が必要な危険サイン

下痢自体はよくある症状ですが、命に関わる脱水や重い感染症、腸の炎症・出血が隠れていることもあります。まずは緊急性の高いサインを確認しましょう。次の症状がある場合は、自己判断で様子を見るより早めの受診が安全です。水分が保てないほどの嘔吐、ぐったりして動けない、意識がぼんやりする、立ちくらみが強いなどは重い脱水のサインになり得ます。血便(赤い血が混じる、黒っぽい便)、強い腹痛が続く、38.5℃以上の高熱が出る、排便後も腹痛が治まらない場合は、感染症の重症化や腸の炎症・出血を疑います。止痢薬で無理に抑えると状態が悪化することもあるため注意が必要です。

高齢者、妊娠中、乳幼児、持病で免疫が低下している人は軽い下痢でも脱水が進みやすい傾向があります。尿が極端に少ない、口や皮膚が乾く、涙が出ないなどの変化があれば、夜間や休日でも医療機関へ相談しましょう。

下痢が続く期間の目安:何日続くと危険?

多くの急性下痢は数日で軽快しますが、長引くほど原因が感染以外に広がります。日数別に「様子見の範囲」と「受診を考えるライン」を整理します。下痢は大きく「数日で治るもの」と「続くことで別の原因を疑うもの」に分かれます。目安として、突然始まった下痢が1〜3日でピークを越えて回復に向かうなら、食あたりやウイルス性胃腸炎などの急性下痢の範囲であることが多いです。

一方、下痢が3日以上続いて日常生活に支障が出る、回数が多く水分が追いつかない、腹痛や発熱が強い場合は受診を検討します。短期間でも、血便や強い腹痛がある場合は日数に関係なく優先度が上がります。1週間以上続く下痢は、感染以外の原因も含めて評価が必要です。さらに2〜4週間以上続く場合や、下痢と便秘を繰り返す場合は、過敏性腸症候群だけでなく炎症性腸疾患や大腸の病気なども鑑別に入るため、早めに医療機関で相談するのが確実です。

下痢の種類を整理:水様便・軟便・粘血便

便の性状は原因推定と受診の優先度判断に役立ちます。水分量や血液・粘液の有無など、観察ポイントを押さえましょう。

水のような水様便は、腸で水分が吸収される前に便が通過している状態で、ウイルス性胃腸炎、食あたり、冷えやストレスでも起こります。回数が多いほど脱水になりやすいので、便の回数と同時に尿の回数や口の渇きもセットで確認するのが実用的です。

軟便は、食事内容や腸の疲れで起こりやすく、比較的軽症のこともあります。ただし、脂っこい食事やアルコールの後に続く、朝だけ繰り返す、緊張場面で悪化するなどパターンがある場合は、生活習慣や過敏性腸症候群の影響を疑う手がかりになります。

粘液が混じる便や血が混じる便は要注意です。痔で紙に少し付く程度の出血もありますが、便そのものに血が混ざる、ゼリー状の粘血便、黒色便、強い腹痛や発熱を伴う場合は腸の炎症や虚血、感染症の重症化も考えられるため、早めの受診が勧められます。

急性下痢と慢性下痢の違い

発症からの期間で「急性」と「慢性」に分けると、疑う病気や対処法が変わります。ここで基本の違いと考え方を確認します。

急性下痢は、突然始まって数日から1週間程度で治まるタイプで、感染性胃腸炎や食中毒、冷え、暴飲暴食などが中心です。基本は脱水予防と腸を休ませることで回復しやすく、症状が軽快していく流れかどうかが重要な判断材料になります。

慢性下痢は、2〜4週間以上続く、または良くなったり悪くなったりを繰り返すタイプです。過敏性腸症候群、薬の副作用、乳糖不耐症などの体質、炎症性腸疾患など、原因が多岐にわたります。慢性の場合に大事なのは、自己流で「体質だから」と決めつけないことです。体重減少、発熱、夜間の下痢、血便、貧血などがあれば器質的な病気の可能性が高まるため、検査で原因を絞り込むことが最短ルートになります。

下痢が止まらない主な原因

下痢が長引く背景には、感染、ストレス、生活習慣、腸の炎症性疾患、大腸の病気など複数の可能性があります。代表的な原因と特徴を原因別に整理します。

下痢を早く落ち着かせるには、闇雲に止痢薬を飲むより、原因の方向性をつかむことが近道です。発熱や嘔吐があるか、血便があるか、食事や飲酒のきっかけがあるか、緊張や睡眠不足と連動するかといった情報は、診察でも重要な手がかりになります。特に見落としやすいのが、複数要因の重なりです。例えば軽い感染に睡眠不足や冷えが加わると回復が遅れたり、ストレス性の下痢に刺激物やアルコールが重なると腸の過敏さが固定化しやすくなります。ここでは代表的な原因を取り上げます。自分の症状に近い項目があれば、セルフケアの方向性と受診の必要性をセットで判断しましょう。

感染性胃腸炎(ウイルス・細菌)

ウイルス(ノロ・ロタなど)や細菌(食中毒菌など)による下痢は、急に始まり、水様便に加えて腹痛、吐き気・嘔吐、発熱を伴いやすいのが特徴です。家族や職場で同様の症状が広がっているときは、感染性をより疑います。経過としては数日で改善に向かうことが多い一方、下痢の回数が多いと脱水が先に問題になります。自宅では、無理に食べるより水分と電解質を優先し、体を休めるのが基本です。血便、高熱、強い腹痛、ぐったりして水分が取れない場合は早めに受診してください。止痢薬で腸の動きを無理に止めると、原因によっては排出が遅れて悪化することがあります。家庭内感染を広げないために、石けんと流水での手洗いを徹底し、嘔吐物や便で汚れた場所は適切な消毒を行います。調理は十分な加熱を意識し、タオルの共用や生ものの取り扱いにも注意しましょう。

ストレス・過敏性腸症候群(IBS)

緊張や不安、生活リズムの乱れで自律神経が崩れると、腸が過敏になり下痢が続くことがあります。会議や通勤前に便意が強まる、排便すると腹痛が軽くなる、下痢と便秘を交互に繰り返すといった特徴は過敏性腸症候群でよくみられます。対処の要点は、腸を刺激する要因を減らしつつ、腸の過敏さを落ち着かせる生活に整えることです。睡眠の確保、食事の時間を一定にする、カフェインや香辛料を控える、急に食物繊維を増やしすぎないなど、地味でも再現性の高い工夫が効いてきます。

ただし、IBSは検査で明確な異常が出にくい一方、似た症状を起こす病気を除外することが前提です。血便、発熱、体重減少、夜間の下痢、貧血などがある場合は自己判断せず受診し、必要な検査を受けた上で治療方針を立てましょう。

冷え・生活習慣(食べ過ぎ、アルコール、睡眠不足)

冷たい飲食物、食べ過ぎ、脂っこい食事、香辛料、アルコール、睡眠不足は、腸の動きを過剰にして下痢を引き起こしたり長引かせたりします。症状のきっかけに心当たりがある場合は、原因を当てにいくほど改善が早まります。見直すポイントは、量とタイミングと内容です。まずは食事量を少なめにし、消化の良いものに寄せて腸を休ませます。夜遅い食事や飲酒を避け、油分や刺激物を控えるだけでも、腸が落ち着く余地が生まれます。冷えが関わるときは、お腹や腰回りを温めるのが有効です。入浴で体を温める、腹巻きを使う、冷たい飲み物を常温にするなど、体感として実行しやすい方法を選びましょう。

再発予防には、下痢が治まった直後に元の食生活へ一気に戻さないことが大切です。回復期の数日間は刺激を控え、睡眠を整えることで、腸の過敏さが残りにくくなります。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

慢性的な下痢に加え、粘血便、腹痛、体重減少、発熱が続く場合は、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患を疑います。単なる胃腸炎と違い、良くなったと思っても再燃を繰り返すことがあるのが特徴です。これらの病気は、適切な治療で症状を落ち着かせる寛解を目指せる一方、放置すると栄養状態の悪化や合併症につながることがあります。早い段階で専門的な評価を受けるほど、生活への影響を小さくしやすいです。

受診では、血液検査で炎症や貧血の有無を確認し、便検査で炎症の程度や感染症との区別を行うことがあります。必要に応じて内視鏡検査で腸の粘膜を直接観察し、診断と治療方針を決めます。

大腸の病気(虚血性腸炎・ポリープ・大腸がん)

突然の強い腹痛と血便が出た場合は、虚血性腸炎など緊急度が高い病気の可能性があります。特に、冷や汗が出るほどの痛みや血便が繰り返すときは早急に医療機関へ相談してください。大腸ポリープは無症状のことも多いですが、出血や便通異常として現れることがあります。下痢が続くこと自体がポリープの典型症状とは限らないものの、便の性状変化が続く場合は検査で確認する価値があります。大腸がんでも、下痢と便秘を繰り返す、便が細くなる、残便感がある、血が混じるなどの変化がみられることがあります。症状だけで判断はできないため、早めの受診と内視鏡検査が重要です。

感染症・その他(新型コロナウイルスなど)

呼吸器症状が中心の感染症でも、消化器症状として下痢が出ることがあります。新型コロナウイルス感染症などでは、発熱や咳、のどの痛み、だるさと同時に下痢がみられるケースもあります。発熱や咳がある場合は、受診先や受診方法が通常と異なることがあります。まずは医療機関や自治体の案内に従い、受診前に電話相談を行うなど、適切な手順で受診しましょう。周囲への感染対策として、手洗い、共有物の衛生管理、同居家族との距離の取り方を意識します。体調不良時に無理に出勤・登校すると感染拡大につながるため、休む判断も対処法の一部です。

今日からできる対処法:下痢を早く治すコツ

原因が重症でない場合は、脱水予防と腸を休める工夫で回復を早められます。やりがちなNGも含め、実践しやすいセルフケアをまとめます。下痢を早く治すうえで最優先は、脱水を防ぎながら腸を休ませることです。下痢が続くと水分だけでなく電解質も失われ、だるさや頭痛、ふらつきが出やすくなります。もう一つのポイントは、腸への刺激を減らすことです。食べないほうが良い場面で無理に食べたり、自己判断で止痢薬を多用したりすると、回復が遅れることがあります。

ここでは、今日からできる具体策を水分、食事、休養、薬の観点で整理します。症状が強い場合や危険サインがある場合は、セルフケアに固執せず受診へ切り替えてください。

水分補給と経口補水液の使い方

下痢で怖いのは、体の水分と電解質が同時に失われることです。口が渇く、尿が少ない、尿の色が濃い、ふらつく、脈が速いなどは脱水のサインになり得ます。水やお茶だけだと電解質の補充が不足しやすいため、下痢が頻回のときは経口補水液を選ぶのが合理的です。飲み方のコツは、一気飲みではなく少量をこまめに摂ることです。胃がムカムカする場合も、ひと口ずつの頻回摂取なら受け付けやすくなります。

嘔吐があるときは、吐いた直後に大量に飲むと再度吐きやすいので、5〜10分ほど間を置いてから少量ずつ再開します。スポーツドリンクは補給の助けになりますが、糖分が多い製品は量によっては下痢を悪化させることもあるため、症状が強いときは経口補水液を優先し、薄めて飲むなど調整しましょう。

胃腸に優しい食事と避けたい食べ物

下痢のときの食事は、腸を休ませながら必要最低限のエネルギーを補う発想が基本です。おかゆ、うどん、スープ、湯豆腐、バナナなど、消化が良く脂質が少ないものから少量ずつ始めます。無理に食べる必要はありません。食欲がない間は水分と電解質を優先し、落ち着いてから量を増やすほうが、結果的に回復が早いことが多いです。避けたいのは、脂っこいもの、香辛料、アルコール、カフェイン、冷たい飲食物です。乳製品は人によっては症状を悪化させることがあり、特に下痢の最中は控えて様子を見ると判断しやすくなります。

体を休める・お腹を冷やさない

下痢は体力を消耗し、睡眠不足が重なると腸の回復が遅れます。可能なら予定を減らし、睡眠と休養を優先するだけでも、回復速度が変わることがあります。お腹の冷えは腸の動きを乱す要因になり得ます。入浴で体を温める、腹巻きや衣類で保温する、カイロを服の上から当てるなど、無理のない範囲で温めてください。仕事や学校を休むか迷う場合は、発熱がある、トイレ回数が多く外出が難しい、脱水気味、嘔吐を伴う、周囲にうつす可能性が高いといった状況を基準に考えると判断しやすいです。体調管理だけでなく感染拡大防止の観点でも、休む選択が対処法になります。

市販薬の選び方:止瀉薬・整腸薬・漢方

止瀉薬は「今すぐ止めたい」に応える一方、使いどころを間違えると不利になります。特に感染性が疑われる下痢、血便、高熱、強い腹痛がある場合は、腸の動きを止めることで病原体や毒素の排出が遅れ、悪化する可能性があるため慎重に考える必要があります。

整腸薬は、腸内環境の回復を助ける位置づけで、急性期の主役ではないものの、回復期やストレス性の下痢で役立つことがあります。即効性より、数日単位で腸の調子を整えるイメージで使うと期待値のズレが減ります。

漢方は体質や症状の出方に合わせて選ぶ考え方で、冷えが強い、腹痛が主体、疲れやすいなどの特徴があるときに合う場合があります。持病がある人、服用中の薬がある人、妊娠中の人は相互作用や禁忌があり得るため、薬剤師や医師に相談しましょう。

市販薬を使っても改善が乏しい、1週間以上続く、悪化している、危険サインがある場合は、薬で粘らず受診につなげることが安全です。

下痢は出し切るべき?止めるべき?

「止めたほうがいいのか、出し切ったほうがいいのか」は原因で答えが変わります。感染の疑いがある場合と、過敏性腸症候群などの場合で考え方を整理します。感染が疑われる下痢では、腸が内容物を外に出そうとしていることが多く、基本は脱水を防ぎながら回復を待つ考え方が中心になります。特に発熱、嘔吐、周囲の流行、食中毒が疑われる状況では、無理に止めるより水分補給と安静を優先し、危険サインがあれば受診します。一方で、過敏性腸症候群や緊張による下痢など、感染ではない可能性が高い場面では、症状をコントロールして生活の質を保つことが重要になります。こうした場合は、整腸薬や医師の処方薬、ストレス対策、食事の調整が治療の中心になり、止痢薬が有効な局面もあります。

結論として、下痢を止めるかどうかは症状の背景で決まります。血便、高熱、強い腹痛、脱水がある場合は、自己判断で止めるより医療機関で原因を確認するほうが安全です。

医療機関で行う検査と診療科の選び方

受診時にどんな検査をするのかを知っておくと不安が減り、適切に相談できます。症状別の診療科の選び方と、代表的な検査の目的をまとめます。下痢が止まらないときは、まず内科または消化器内科が基本の相談先になります。血便や強い腹痛がある場合、脱水が疑われる場合は早めに受診し、必要に応じて救急外来の利用も検討します。診察では、症状の経過(いつから、回数、便の性状)、発熱や嘔吐の有無、食事や渡航歴、周囲の流行、服用薬、持病などが重要な情報になります。事前にメモしておくと短時間でも要点が伝わり、検査や治療がスムーズになります。検査は原因の当たりをつけて選択されます。血液検査で炎症や脱水、貧血を評価し、便検査で感染や腸の炎症の手がかりを確認することがあります。症状が長引く、血便がある、体重減少などがある場合は、内視鏡検査で腸粘膜を直接確認し、炎症性腸疾患や腫瘍などを評価します。発熱や咳など感染症を疑う症状が同時にある場合は、受診前に電話で受診方法を確認し、院内での感染対策に従いましょう。

下痢が止まらないときの対処法まとめ

最後に、危険サインの確認からセルフケア、受診の目安までをチェックリスト形式で整理し、次に取るべき行動が分かるようにまとめます。まずは危険サインを確認します。血便、強い腹痛、高熱、ぐったりして水分が取れない、意識がぼんやりする、尿が極端に少ないといった状況なら、日数に関係なく早めに受診が必要です。危険サインがなければ、基本は脱水予防と腸を休ませることです。経口補水液を少量ずつこまめに飲み、刺激の少ない食事を少量から再開し、睡眠と休養を優先します。冷えや暴飲暴食、アルコール、カフェインを避けるだけでも回復が早まることがあります。薬は目的に合うものを選びます。感染が疑われる、血便や高熱がある場合は止痢薬を自己判断で使わず、整腸薬や水分補給を中心にし、必要なら受診します。

受診の目安として、下痢が3日以上続いてつらい、悪化している、生活に支障が大きい場合は相談を検討し、1週間以上続く場合は原因の評価が必要です。症状をメモして受診すると、適切な検査と治療につながりやすくなります。