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HEPATOLOGY

肝臓内科外来:肝機能異常について

ABOUT

当院の肝機能異常外来について

広島八丁堀内科・胃腸内視鏡クリニックでは肝臓専門医による肝機能異常外来を実施しております。

肝臓は沈黙の臓器と言われており、ほとんどの場合肝臓に異常があっても自覚症状がありません。そのため健康診断で肝機能の異常を指摘されて来院される方がほとんどです。

一般的に健康診断で測定される肝機能の項目はAST、ALT, γ-GTP、ALP、LDH, ビリルビンなどがあります。当院では各種血液検査での精密検査に合わせて、腹部超音波での画像検査にも対応しております。肝機能異常を指摘され際には、遠慮なく当院を受診してください。

DISEASE

肝機能異常で見つかる病気

症状がない状態で肝機能の異常を指摘された場合、ほとんどの場合は生活習慣病や肥満と関連した脂肪肝(MASLD/MASH)とアルコール多飲がある方はアルコール性肝障害である場合がほとんどです。しかし稀ですが、ウイルス性肝疾患や自己免疫性肝炎などの可能性があるため精密検査が必要です。以下は私見ですが主な原因の頻度を簡便にまとめてみました。

 超高頻度

非アルコール性脂肪性肝疾患 (MASLD/ 旧称NAFLD)

 高頻度

アルコール性肝障害

  中頻度

ウイルス性肝障害(B型、C型、EBウイルス) 、体質性黄疸

低頻度

閉塞性黄疸、薬剤性肝障害

自己免疫性肝炎(AIH)、原発性硬化性胆管炎(PBC)

極稀

Wilson病

非アルコール性脂肪性肝疾患 (MASLD/ 旧称NAFLD)

非アルコール性脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease MASLD/ 旧称Non-Alcoholic Fatty Liver Disease、NAFLD)は、肝臓に脂肪が異常に蓄積する疾患の総称です。この脂肪蓄積は、アルコールの摂取が少ないか全くない場合に発生します。

MASLDは一般的に肥満や2型糖尿病などの代謝症候群と関連しており、これらの状態が進行すると肝臓に炎症や線維化が発生し、非アルコール性脂肪性肝炎(metabolic dysfunction associated steatohepatitis MASH/ 旧称Non-Alcoholic Steatohepatitis、NASH)へ進展することがあります。


MASLDの主な特徴は以下の通りです

脂肪蓄積(脂肪肝)

肝細胞内に脂肪が蓄積します。これは通常、肝臓が脂肪を代謝する際に生じるべきない量の脂肪が蓄積することによります。

炎症(MASH)

一部の患者では、脂肪蓄積が炎症を引き起こし、MASHと呼ばれる状態に進行します。MASHは肝炎の一形態であり、これが進行すると肝臓に線維化(繊維組織の増殖)が起こり、肝硬変や肝がんのリスクが増加します。

代謝症候群との関連

肥満、2型糖尿病、高血圧、高脂血症などの代謝症候群とMASLDは密接に関連しています。これらの状態が同時に存在することが多いです。
MASLDの診断は、臨床症状、血液検査、イメージング検査(超音波、CT、MRI)などを組み合わせて行われます。治療は主にライフスタイルの変更、体重管理、運動、食事療法などが含まれます。進行した場合は、医師による適切な医薬品の処方や管理が必要となります。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、慢性的なアルコールの摂取が原因で生じる肝臓の損傷や疾患の総称です。ASTとALTが上昇しますが、ASTがより上昇するとされています。併せてγ-GTPの上昇が特徴的です。また赤血球の容積の増大を伴う特徴的な貧血パターンを示すこともあります(大球性貧血)。アルコールの長期間および過剰な摂取は、肝臓に対して有害であり、次第に肝細胞に損傷を引き起こすことがあります。

 

以下に、アルコール性肝障害の主な形態をいくつか挙げます。

脂肪肝(アルコール性脂肪性肝疾患、ALD)

脂肪が肝臓に蓄積する状態。アルコールの代謝により、脂肪が肝臓に取り込まれ、これが慢性的に続くことで脂肪肝が進行します。

アルコール性肝炎

脂肪肝が進行し、炎症が伴った状態。炎症が進むことで肝細胞が傷つき、肝機能が急速に損なわれる可能性があります。アルコール性肝炎は急性の状態であり、重篤な場合は致命的な結果につながることがあります。

アルコール性肝硬変

アルコール性肝炎が慢性的に進行し、肝臓の組織が線維化して硬くなる状態。肝硬変は肝臓の正常な機能を阻害し、合併症が生じやすい病態です。特に食道静脈瘤の破裂による消化管出血は生命に関わる状態です。

アルコール性肝細胞がん

アルコール性肝硬変の進行や長期にわたるアルコール摂取により、肝臓ががん化する可能性があります。アルコール性肝がんは通常、進行が速く、治療が難しい場合があります。

アルコール性肝障害は、個体差やアルコールの摂取量によって進行の速さや症状が異なります。初期段階では症状がほとんど現れないこともあり、進行してから症状が明らかになることがあります。診断は、患者の症状、臨床検査、画像診断などを総合的に考慮して行われます。アルコール性肝障害は予防可能であり、アルコールを全く飲まない禁酒が最も有効な対策です。早期に診断し、治療を開始することで進行を抑制することも可能です。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、肝臓に炎症を引き起こすウイルス感染症の総称です。近年ではC型肝炎が完治可能になり、患者さんは減少傾向が続いています。主なウイルス性肝炎の原因として知られているウイルスには、A、B、C、D、E型の肝炎ウイルスがあります。各肝炎ウイルスによる感染の特徴や進行様式は異なりますが、いずれも肝臓に対する影響があります。 B型肝炎とC型肝炎以外は急性肝炎として発症することが多いため、健康診断で指摘されることはほぼありません。


以下に主なウイルス性肝炎のタイプとそれぞれの特徴を説明します。

A型肝炎ウイルス(HAV)

主に経口感染経路で広まり、感染者の糞口経路(排泄物など)が主な伝播経路です。

急性病期の症状は発熱、吐気、腹痛、黄疸などが含まれます。一般的には急性感染であり、慢性化することはほとんどありません。健診で指摘されることはありません。

B型肝炎ウイルス(HBV)

血液や体液を介して感染が広がります。感染源は感染者の血液、性的な接触、母子感染、医療行為などがあります。以前は注射針の使い回しや、母子垂直感染が多いウイルスでしたが、現在都市部では慢性化リスクの高いゲノタイプAが性感染症として広まっています。急性感染が慢性化する可能性があり、慢性感染が進行すると肝硬変や肝がんのリスクが増加します。

C型肝炎ウイルス(HCV)

血液を介して感染が広がります。感染源は感染者の血液、共有の注射器、輸血、器具の不適切な消毒などが含まれます。急性感染が慢性化する可能性が高く、慢性感染が進行すると肝硬変や肝がんのリスクが増加します。以前は副作用の強いインターフェロンでの治療が主流でしたが、現在はインターフェロンを使わない直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が使用されるようになり、ウイルスの排除が高い確率で可能になりました。そのため治癒が可能な疾患になったため、近い将来C型肝炎による死者は激減することが予想されています。

EBウイルス(EBV)

EBウイルスは一般的に唾液を介して幼少期から思春期(10〜20歳代)にかけて感染します。そのため通称「キス病 kissing disease」と呼ばれています。EBウイルスが感染して伝染性単核球症を発症すると発熱や咽頭扁桃炎、リンパ節の腫大、黄疸、肝臓の腫大、脾臓の腫大などの症状を認めることがあります。ほとんどの場合は重症化せず、自然に治癒します。

原発性胆汁性胆管炎 (PBC)

原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis, PBC)は、慢性的な自己免疫性の肝疾患であり、主に50歳代以上の女性に後発します。肝臓内の胆汁が通る管である小胆管における炎症と破壊を特徴とする疾患です。

そのため胆道系酵素であるALP, γ-GTPの上昇が特徴的です。また自己抗体である抗ミトコンドリア抗体が90%の方に陽性になります。この疾患は肝臓の免疫系が誤って自分の組織を攻撃する自己免疫疾患の一種であり、進行すると肝硬変や肝不全に至る可能性があります。治療は主に症状の緩和や進行を遅らせることを目的とし、ウルソデオキシコール酸(UDCA)が一般的に使用されます。また、免疫抑制薬や肝移植も一部の患者に対して検討されることがあります。

自己免疫性肝炎 (AIH)

自己免疫性肝炎(Autoimmune Hepatitis, AIH)は、肝臓における自己免疫反応によって引き起こされる慢性的な肝疾患です。免疫系が誤って健康な肝細胞を攻撃し、炎症を引き起こすことが特徴的です。AIHは通常、50歳以上の女性に多く見られますが、全年齢層で発症することがあります。AIHの治療は、免疫抑制薬や抗炎症薬の使用が一般的です。主にステロイドやアザチオプリンといった免疫抑制剤が使われ、肝臓の炎症を和らげることが目標とされます。

閉塞性黄疸

閉塞性黄疸(Biliary Obstruction)は、胆道系が一時的または持続的に閉塞される状態を指します。胆道は肝臓から胆嚢を経て十二指腸に至る経路を取り、胆汁の流れを促進します。閉塞性横断が発生すると、胆汁の正常な流れが妨げられ、さまざまな症状や合併症が生じる可能性があります。主な画像所見は閉塞した胆管の影響による、上流の胆管の拡張です。原因としては胆石の落下による総胆管結石、膵臓腫瘍(膵臓がんなど)などが挙げられます。早期に内視鏡治療が必要になる場合が多く、専門医による早期の診断が必要です。

薬剤性肝障害

薬剤性肝障害は、特定の薬物の使用が原因で生じる肝臓の損傷や異常を指します。ある薬物が肝臓に影響を及ぼすことで、肝機能が低下し、炎症や肝細胞の損傷が生じる可能性があります。診断は基本問診から判断することが多いですが、DLST:薬剤誘発性リンパ球刺激試験にて診断をすることがあります。治療は疑われる薬剤を中止することです。

体質性黄疸

肝臓で血液の成分であるビリルビンを代謝する機能に生まれつき異常があり、体質的に血中のビリルビンが高い方がいます。これを体質性黄疸と言います。人口の約5%にこの体質であるGilbert症候群(体質性黄疸の一つ)があるとされています。

腫瘍(がんetc)による肝障害

肝臓には様々な腫瘍が発生します。肝臓の良性腫瘍や肝細胞癌などの悪性腫瘍、他の臓器からの転移性肝腫瘍(がんの転移)が挙げられます。それらが肝臓の正常細胞のスペースを占拠することで肝障害をきたします。また胆道を閉塞し閉塞性黄疸を起こします。診断は造影MRIや造影CTで診断します。

Wilson病(ウィルソン病)

非常に稀な肝臓の遺伝性の疾患です。この病気は体内で銅の代謝に問題があり、肝臓から銅の排出が傷害されていることが主な原因となります。角膜に銅が沈着することで、特徴的な角膜輪(目の特徴的なリング)を認めることがあります。治療は薬物を使用し、体内から銅を排出させることです。

BLOOD TEST

肝機能異常の検査(血液検査)

AST (Aspartate Aminotransferase)

ASTは、肝臓や心臓、筋肉などで見られる細胞に存在する酵素です。

ASTは細胞が破壊されることで、血液中に吐き出される酵素を逸脱酵素の一つです。

ASTは、肝機能障害以外に心臓疾患や筋骨格系の疾患などの病態に関連して上昇することがあります。

ALT (Alanine Aminotransferase)

ALTもASTと同様に細胞損傷を示す酵素で、特に肝臓で高い濃度で見られます。

肝臓細胞の損傷や肝炎などの疾患がある場合、ALTの濃度が上昇することがあります。ASTに比較し半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)が長く、ASTとALTを比較することで病態を推測することの参考になります。

γ-GTP (Gamma-Glutamyl Transferase)

γ-GTPは、肝臓や膵臓、腎臓などで見られる酵素で、主に胆道系の障害を示すマーカーとされています。

胆嚢や胆道に問題がある場合、γ-GTPの濃度が上昇することがあります。またγ-GTPはアルコールに敏感に反応し、お酒をよく飲む人では数値が上昇することがあります。

ただし健常人では、γ-GTPの数値が上昇しても一時的であり、すぐにもとに戻ります。

そのため一定期間禁酒した後にγ-GTPの再検査をすれば、アルコールによる上昇か、肝臓や膵臓などの障害による上昇かの区別はつきます。

ALP (Alkaline Phosphatase)

ALPは、骨、肝臓、腸、腎臓などで見られる酵素で、特に胆道系や骨の状態を評価するのに用いられます。

肝臓や胆嚢に問題がある場合、ALPの濃度が上昇することがあります。

特に胆石や胆道炎、胆道がんなどで胆道がふさがれて胆汁の流れが悪くなる胆汁うっ滞の病態では、肝機能が低下すると、胆汁中のALPは逆流して血液中に流れ込み、血液中のALPが上昇します。

LDH (Lactate Dehydrogenase)

LDHは細胞内で見られる酵素で、細胞損傷や炎症を示すマーカーとなります。

肝臓や心臓、筋肉、赤血球などで見られる組織の損傷がある場合、LDHの濃度が上昇することがあります。そのため肝臓の障害だけではなく、各臓器の障害や悪性腫瘍、溶血、また激しい運動などによっても上昇します。

血液中のLDHが上昇していても、肝臓に障害があるとは限りませんので、他の検査と併せて判断する必要があります。

ビリルビン (Bilirubin)

ビリルビンは、赤血球が分解されて生成される黄色い色素で、肝臓で代謝されます。

肝機能障害や胆道の問題などにより、ビリルビンの代謝が阻害されると、血中のビリルビン濃度が上昇します。

ビリルビンには2種類あり、間接ビリルビンと直接ビリルビンです。ビリルビンが肝臓で処理されると間接から直接ビリルビンに変化します。間接と直接ビリルビンの比率で病態を推測します。

プロトロンビン時間

血を固まらせる凝固因子の機能を測る検査です。プロトロンビンは血液凝固因子の第II因子であり、肝臓で生成されるタンパク質です。

肝機能が低下した病態では、これらの血液凝固因子を生成する能力が肝臓で低下し、血が固まりにくくなり出血傾向を呈します。

プロトロンビン時間はこの血液凝固因子を肝臓が生成する能力を測定する鋭敏な検査です。肝不全など急性の病態で肝機能の指標とされます。

経口抗凝固薬であるワルファリンを内服されている方は肝機能に異常がなくてもプロトロンビン時間が延長します。

HBs抗原

B型肝炎ウイルスの表面抗原であり、HBs抗原が陽性であった場合、「現在B型肝炎ウイルスに感染している」状況を示唆する所見になります。

ただし、ウイルスに活動性があるかなども総合的に判断する必要があるため、HBs抗原はスクリーニング(拾い上げ検査)の役割の中心です。

HCV抗体

HCV複合抗原に対する抗体で、C型肝炎ウイルス感染者で広く陽性になりためスクリーニング検査で使用されます。

最近では抗ウイルス薬が発展し、ウイルスが除去される患者さんが多いですが、除去された後でも陽性は継続します。

C型肝炎ウイルスの感染の最終判断はHCV-RNAの測定が必要です。

抗核抗体

自己免疫性肝炎(AIH)など自分自身の細胞を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患の患者さんの血液に検出されます。

検出される病気としては全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群など膠原病が多いとされています。

抗ミトコンドリア抗体/ 抗ミトコンドリア2抗体

原発性胆汁性胆管炎の際に検出される血清抗体です。

特に抗ミトコンドリア抗体の9種類(M1~9)のサブタイプのうち、M2と呼ばれる抗ミトコンドリア2抗体はPBCに特徴的とされています。

IMAGING TEST

肝機能異常の検査(画像検査)

肝機能異常の際に、まず行われる検査は腹部超音波検査です。その所見で追加の画像精査が必要になった場合、MRIやCTで精密検査が行われます。

腹部超音波

簡便で体に侵襲もない、非常に安全な検査です。また肝臓を観察する検査能力も高く、肝臓の精査で第一に行われる検査です。腹部超音波において着眼するポイントは大きく3つです。

①肝臓の辺縁の形、②肝臓の実質のエコー輝度、③占拠性病変(SOL: space occupying lesion)の有無、です。

①に関しては肝硬変と正常の肝臓の違いが現れます。正常な肝臓は鋭角でsharpと表現される辺縁であるのに対し、肝硬変は丸み(dull)を帯びてきます。

②については内部のエコー輝度で脂肪の沈着の状況を評価します。

③SOLは主要性病変の有無を確認することで、肝がんや他のがんの転移性病変、または肝臓の良性腫瘍の可能性を評価します。


さらに当院では最新型の超音波装置(ARIETTA 650 DeepInsight SE)を採用しており、脂肪肝の程度や肝臓の繊維化の程度も数値で測定が可能となっております。今までは主観的での評価で行われていた脂肪肝や肝硬変診断の評価も、これからは客観的な指標での診断が可能です。

MRI(提携病院での撮影になります)

磁気の原理を使用し肝臓を評価するため被曝のリスクがなく安全な検査です。

基本的にMRIは倒音波で肝臓に占拠性病変SOLが指摘された際に、精密検査として実施されます。

またウイルス性肝炎・肝硬変の方は肝細胞癌のリスクが高く、定期的にMRIを使った精査が必要です。

MRIの強みは肝臓専用造影剤であるEOB・プリモビストが使える点です。これは肝臓の占拠性病変SOLの診断の際に血流のタイミングで造影剤が取り込まれる時間の違いを利用し、肝細胞癌の診断の際に高い能力を発揮します。

CT(提携病院での撮影になります)

CTも造影剤を使うことで占拠性病変SOLの精査の時に役立ちます。

造影剤が血流に乗って肝臓に流入するタイミングに合わせて撮影を行います。肝細胞癌や肝血管腫などの鑑別の際に使用されます。

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