
HEPATOLOGY
肝臓内科外来:肝機能異常について
ABOUT
当院の肝機能異常外来について
広島八丁堀内科・胃腸内視鏡クリニックでは肝臓専門医による肝機能異常外来を実施しております。
肝臓は沈黙の臓器と言われており、ほとんどの場合肝臓に異常があっても自覚症状がありません。そのため健康診断で肝機能の異常を指摘されて来院される方がほとんどです。
一般的に健康診断で測定される肝機能の項目はAST、ALT, γ-GTP、ALP、LDH, ビリルビンなどがあります。当院では各種血液検査での精密検査に合わせて、腹部超音波での画像検査にも対応しております。肝機能異常を指摘され際には、遠慮なく当院を受診してください。
EQUIPMENT
当院の医療機器について
1. 超音波ARIETTA 650 DeepInsight SE(富士フィルム社)
画像処理開発においてAI技術を使用したDeepInsight技術は、膨大な技術から必要な情報のみを抽出し、ノイズに埋もれていた微細な組織や複雑な組織構造をより明瞭に表現、より自然な表現での組織の描出に貢献します。
特に肝臓の評価に関しては脂肪化や繊維化の評価を数値で測定できるため、非常に質の高い画像検査が可能となります。

2.生化学分析装置 ドライケムNX700(富士フィルム社)
血液検査の結果をすぐに説明したい!の思いを実現するため、当院ではこのドラミケムNX700を採用しました。肝臓や膵臓機能、コレステロールの値など一般的に外部検査機関に委託する検査を院内で15分以内に完結するシステムを導入しました。主に腹痛外来ですぐに結果が確認したい場合や、定期的な脂質異常症のコレステロール値や肝臓外来の肝機能評価の際に使用されます。(検査項目によっては全て外注検査になる場合があります)

DISEASE
肝機能異常で見つかる病気
症状がない状態で肝機能の異常を指摘された場合、ほとんどの場合は生活習慣病や肥満と関連した脂肪肝(MASLD/MASH)とアルコール多飲がある方はアルコール性肝障害である場合がほとんどです。しかし稀ですが、ウイルス性肝疾患や自己免疫性肝炎などの可能性があるため精密検査が必要です。以下は私見ですが主な原因の頻度を簡便にまとめてみました。
超高頻度
非アルコール性脂肪性肝疾患 (MASLD/ 旧称NAFLD)
高頻度
アルコール性肝障害
中頻度
ウイルス性肝障害(B型、C型、EBウイルス) 、体質性黄疸
低頻度
閉塞性黄疸、薬剤性肝障害
稀
自己免疫性肝炎(AIH)、原発性硬化性胆管炎(PBC)
極稀
Wilson病
非アルコール性脂肪性肝疾患 (MASLD/ 旧称NAFLD)
非アルコール性脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease MASLD/ 旧称Non-Alcoholic Fatty Liver Disease、NAFLD)は、肝臓に脂肪が異常に蓄積する疾患の総称です。この脂肪蓄積は、アルコールの摂取が少ないか全くない場合に発生します。
MASLDは一般的に肥満や2型糖尿病などの代謝症候群と関連しており、これらの状態が進行すると肝臓に炎症や線維化が発生し、非アルコール性脂肪性肝炎(metabolic dysfunction associated steatohepatitis MASH/ 旧称Non-Alcoholic Steatohepatitis、NASH)へ進展することがあります。
MASLDの主な特徴は以下の通りです
脂肪蓄積(脂肪肝)
肝細胞内に脂肪が蓄積します。これは通常、肝臓が脂肪を代謝する際に生じるべきない量の脂肪が蓄積することによります。
炎症(MASH)
一部の患者では、脂肪蓄積が炎症を引き起こし、MASHと呼ばれる状態に進行します。MASHは肝炎の一形態であり、これが進行すると肝臓に線維化(繊維組織の増殖)が起こり、肝硬変や肝がんのリスクが増加します。
代謝症候群との関連
肥満、2型糖尿病、高血圧、高脂血症などの代謝症候群とMASLDは密接に関連しています。これらの状態が同時に存在することが多いです。
MASLDの診断は、臨床症状、血液検査、イメージング検査(超音波、CT、MRI)などを組み合わせて行われます。治療は主にライフスタイルの変更、体重管理、運動、食事療法などが含まれます。進行した場合は、医師による適切な医薬品の処方や管理が必要となります。
アルコール性肝障害
アルコール性肝障害は、慢性的なアルコールの摂取が原因で生じる肝臓の損傷や疾患の総称です。ASTとALTが上昇しますが、ASTがより上昇するとされています。併せてγ-GTPの上昇が特徴的です。また赤血球の容積の増大を伴う特徴的な貧血パターンを示すこともあります(大球性貧血)。アルコールの長期間および過剰な摂取は、肝臓に対して有害であり、次第に肝細胞に損傷を引き起こすことがあります。
以下に、アルコール性肝障害の主な形態をいくつか挙げます。
脂肪肝(アルコール性脂肪性肝疾患、ALD)
脂肪が肝臓に蓄積する状態。アルコールの代謝により、脂肪が肝臓に取り込まれ、これが慢性的に続くことで脂肪肝が進行します。
アルコール性肝炎
脂肪肝が進行し、炎症が伴った状態。炎症が進むことで肝細胞が傷つき、肝機能が急速に損なわれる可能性があります。アルコール性肝炎は急性の状態であり、重篤な場合は致命的な結果につながることがあります。
アルコール性肝硬変
アルコール性肝炎が慢性的に進行し、肝臓の組織が線維化して硬くなる状態。肝硬変は肝臓の正常な機能を阻害し、合併症が生じやすい病態です。特に食道静脈瘤の破裂による消化管出血は生命に関わる状態です。
アルコール性肝細胞がん
アルコール性肝硬変の進行や長期にわたるアルコール摂取により、肝臓ががん化する可能性があります。アルコール性肝がんは通常、進行が速く、治療が難しい場合があります。
アルコール性肝障害は、個体差やアルコールの摂取量によって進行の速さや症状が異なります。初期段階では症状がほとんど現れないこともあり、進行してから症状が明らかになることがありま す。診断は、患者の症状、臨床検査、画像診断などを総合的に考慮して行われます。アルコール性肝障害は予防可能であり、アルコールを全く飲まない禁酒が最も有効な対策です。早期に診断し、治療を開始することで進行を抑制することも可能です。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎は、肝臓に炎症を引き起こすウイルス感染症の総称です。近年ではC型肝炎が完治可能になり、患者さんは減少傾向が続いています。主なウイルス性肝炎の原因として知られているウイルスには、A、B、C、D、E型の肝炎ウイルスがあります。各肝炎ウイルスによる感染の特徴や進行様式は異なりますが、いずれも肝臓に対する影響があります。 B型肝炎とC型肝炎以外は急性肝炎として発症することが多いため、健康診断で指摘されることはほぼありません。
以下に主なウイルス性肝炎のタイプとそれぞれの特徴を説明します。