2026.06.02
便潜血検査とは?その仕組みと目的を知っておこう

便潜血検査は、便に血液が混入しているかどうか、つまり大腸や小腸などの下部消化管からの出血があるかどうかを調べるために行われます。出血量が少ない場合は、便に血が混じっていても見た目では判別ができないため、この検査が役立ちます。
現在わが国で多く行われているのは「免疫学的便潜血検査」といわれる検査で、ヒトの血液にのみ反応するため事前の食事制限などが不要です。胃酸や腸液により変性する上部消化管(食道・胃)からの出血には反応せず、大腸由来の出血に特異的とされています。
便潜血検査では便に血が混じっているかどうかを調べ、目に見えないわずかな出血も検知することが可能です。
「たった2日間、便を採取するだけ」と思われがちですが、この小さな検査が大腸がんの早期発見に大きくつながっています。私が外来で患者さんにいつもお伝えしているのは、「便潜血は体からのサインです。軽く見ないでください」ということです。
目次
検査が推奨される年齢・頻度
– 大腸がん検診として、検診開始年齢は40歳を推奨しますが、45歳または50歳から開始することも可能です。検診間隔は1年から2年にすることができます。採便回数は1回法でも2回法のいずれも実施可能です。
– 40歳以上を対象に大腸がん検診が実施されているにもかかわらず、40代と50代の大腸がん罹患率は国際的に高いレベルにあります。
1日法・2日法の違い
便潜血検査は1日法と2日法の2種類があります。違いは、1日分の便を取るか、2日分の便を取るかです。一般的には、2日法の方が大腸がんの発見率が高いことが分かっています。
2日法が採用されているのは1日だけでは検出率(感度)が下がるためです。2回中1回でも潜血が検出されれば、便潜血陽性と判定されます。
便潜血が陽性だった場合の基本ルール
健康診断の結果に「要精密検査」と書かれていても、「痔かもしれない」「1回だけだから大丈夫」と自己判断して放置してしまう方が少なくありません。しかし、それは非常に危険な行動です。
便潜血陽性であったにも関わらず、消化器内科を受診せずに放っておくことが一番やってはいけないことです。「硬い便だったから肛門が切れてしまった」「昔から痔があるからソレが原因だろう」などと自己解釈をしてしまい、精密検査の機会を逃してしまう方が多く見受けられます。
厚生労働省は、便潜血検査の陽性反応が出た場合の精密検査として大腸内視鏡検査を推奨しています。大腸内視鏡検査は、大腸の病変を直接観察できるだけでなく、必要に応じて組織のサンプルを採取したり治療(切除)したりできるため、精密検査の中で最も精度が高く、大腸がんを予防することもできる唯一の検査であるとされています。
大腸がん検診において100回の便潜血検査が「陰性」より、1回の「陽性」の結果に検診としての意義があります。
陽性の場合に考えられる原因
便潜血が陽性になる原因はがんだけではありません。主な原因として以下が挙げられます。
- 大腸ポリープ(腺腫)
- 大腸がん(早期・進行を問わず)
- 痔(いぼ痔・切れ痔など)
- 大腸炎・大腸憩室
「痔があるから大丈夫」は通用しない
便潜血検査が陽性の場合、大腸がんが見つかる割合は約2.4%です。そのため、痔があることが分かっている方であっても陽性結果を軽視せず、精密検査を受けたほうが良いでしょう。
便潜血検査は痔や生理が原因で陽性反応が出てしまうことがあります。しかし、便潜血検査が陽性になったにも関わらず、過去に痔の既往があるからといって安易に自己判断してしまうと、精密検査の機会を逃してしまいます。
大腸カメラとは?検査でわかること
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、多くの方が「つらそう」「怖い」とイメージされがちな検査です。しかし、技術の進歩とともに患者さんへの負担は大幅に軽減されています。ここでは検査の概要と、何がわかるかをお伝えします。
全大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入し、直腸から回盲部までを観察します。腸管内を直接観察でき、治療も実施できます。ただし、排便を促すための前処置として腸管洗浄剤や下剤を服用する必要があります。
リアルタイムで鮮明な映像を医師がモニターで見ることができるため、数ミリ程度の小さなポリープでも発見が可能です。ポリープの種類、根の深さまで分かります。
便潜血検査と大腸カメラの精度の違い
便潜血検査の病変検出精度は、進行大腸がんへの感度が1日法で73.3%、2日法で85.6%といわれており、直接大腸内を調べる大腸内視鏡検査等の精密検査に比べると劣ります。
一方、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)はポリープ(腺腫)に対しても詳細な評価が可能であり、便潜血が陰性でも内視鏡検査でポリープや早期がんが発見されることが多くあります。
ポリープ発見からその場で切除まで
腺腫は大腸内視鏡検査中に最も多く発見されるポリープで、これを発見して切除することによって、将来の大腸がんの発生や大腸がんによる死亡を大幅に減らすことができると報告されています。
ほとんどの大腸ポリープは大腸内視鏡検査中に切除することができます。切除する時には痛みは全くありません。切除したポリープは回収し、顕微鏡検査によって種類を診断し、その後の治療方針の参考にします。

大腸カメラ検査の流れ・準備の基本ルール
「検査の準備が大変そうで踏み出せない」という声を多くいただきます。当院では患者さんが少しでも安心して受診できるよう、事前説明を丁寧に行っています。おおまかな流れをご確認ください。
検査前日の過ごし方
前日の食事は、おかゆやスープなどの消化に良いものを摂ります。食べ過ぎや消化に良くない食べ物は避けましょう。夜遅くの食事や飲酒は禁止されています。
葉もの野菜や茎野菜、海藻類、きのこ類、ナッツや種のある果物など繊維質の多い食べ物は腸の中に残りやすいため、検査の3日前から避けていただきます。
検査当日:腸管洗浄剤(下剤)について
当日は、色の薄い水様便になるまで数回かけて排便を行います。これは非常に大切な準備で、検査前に大腸内をキレイに洗い流しておくことで、カメラで鮮明に観察ができるようになります。
最近は1〜1.5リットル程度の服用で済む腸管洗浄剤も登場しています。味もスポーツドリンク風で比較的飲みやすく工夫されています。事前診察で下剤の種類について相談すれば、自分に合った方法を提案してもらえます。
検査中・検査後の注意点
検査中は軽い鎮静剤を使用します。直径約12mmの内視鏡を肛門から挿入し、ゆっくり大腸の一番奥まで挿入します。その後、炭酸ガスを入れながら腸内をじっくり観察しながら引き抜いていきます。
検査後は20〜30分程度、リカバリー室で休憩していただきます。炭酸ガスを用いているため、お腹の張りは比較的早く解消します。診察室で、検査時に撮影した画像を見ながら、医師より検査結果の説明を受けます。
鎮静剤を使用した場合、当日の車・バイク・自転車の運転はできません。ご来院の際は公共交通機関をご利用いただくか、ご家族に送迎をお願いしてください。
便潜血陽性を放置することの危険性
日本対がん協会のデータでは、便潜血陽性の人に限っては35人に1人の頻度で大腸がんが見つかっています。この数字、決して「まれ」とは言えません。
大腸がん検診の最大の問題は、便潜血陽性の受診者のうち、大腸内視鏡などの二次検査を受ける人が約半数しかいないということです。せっかく検診を受けても、陽性のとき精密検査を受けなければ、大腸がんも見つからないばかりか、大腸ポリープも見つかりません。大腸がんは早期に発見すれば、ほとんど治癒します。
大腸がんが発見されたとしても、早期であれば90%以上が内視鏡治療で完治します。
便潜血陰性でも安心できないケース
「便潜血が陰性=大腸がんではない」ではありません。残念ながらすべての大腸がんがこの検査で陽性になるわけではなく、あくまで1日目、2日目とも便に血が混ざっていなかったということでしかありません。
便潜血が陰性でも、便秘や下痢が続く、便が細い、腹痛などがある場合は大腸内視鏡検査などの精密検査を実施したほうがよい場合もあります。
受診を先延ばしにしがちな理由とその対処
「忙しいから」「怖いから」という声を多く聞きます。しかし、無症状のうちに検診を受診した人では、早期の大腸がんが発見される可能性が高く、その段階で治療すれば、ほぼ治癒が可能です。症状が出てから受診するのでは、手遅れになるリスクがあります。不安に思ったときが、受診の絶好のタイミングです。
大腸カメラ検査後の注意点
検査だけ受けた場合は飲食に特に制限はありませんが、ポリープを切除した場合は食事制限が発生するので、医師の指示に従ってください。
合併症を予防するために、ポリープ切除後およそ1週間はアルコールや腹圧のかかる運動は避ける必要があります。
ポリープ切除後の出張や旅行などでの遠方への移動は、万が一再出血が起こった場合に速やかな適切な処置が難しくなる可能性があります。当院ではポリープ切除後の3〜7日間は遠方への移動を制限させていただいております。
切除後に出血した場合の対応
切除部位からの出血はポリープ切除後のトラブルの中で最も多いもので、確率的には数百例に一例程度の頻度で発生します。少量の出血(便に血液が混じる場合)は自然に止血されますので、安静にして様子を見るだけで軽快します。しかし、出血が大量の時は大腸内視鏡で止血する必要があります。
次回の検査タイミングの目安
大腸がんの発見のための定期的な内視鏡検査では、3年以上あけてしまうと、大腸がんが進行した状態で見つかる可能性が高くなるとされます。初回のみ1年後、その後は2〜3年ごとに検査を行うことが推奨されています。
特に病変がなく繰り返し便潜血が陽性になってしまう方や、直近の大腸内視鏡で異常が指摘されない場合については、担当医とご相談ください。
まとめ(総括)
この記事では、便潜血検査と大腸カメラについて基本から注意点まで幅広くお伝えしてきました。重要なポイントを以下に整理します。
通常、食物が便として排泄される過程で便に血が混じることはありません。この検査でひっかかった方、陽性と判定された方は「大腸がんの可能性がある」ということです。消化器内科への受診が必要です。2日法で2回中「一回だけ陽性」の方も、消化器内科への受診が必要です。
便潜血が陽性でも、必ずしもがんではありません。しかし、原因を特定するために【大腸カメラによる精密検査】が不可欠です。
日本では1992年より便潜血検査免疫法による大腸がん検診が公的に実施されていますが、検診受診率と精密検査受診率が低いため、大腸がん死亡率の減少は十分ではありません。
ポリープや早期のがんが発生しても、ほとんどの場合は症状が現れません。無症状の段階から見つけ出すには、便潜血検査や大腸カメラ検査を行う必要があります。
「まだ若いから」「症状がないから」と先送りにするのではなく、便潜血陽性という結果が出た今こそ、行動を起こすタイミングです。私たちは患者さんのそばに寄り添い、不安を一緒に解消してまいります。どうぞお気軽にご相談ください。


