2026.06.02
便潜血検査とは? 大腸がん検診で「要精密検査」になったら?血便がなくても受診すべき理由

「健康診断の結果が返ってきたら、大腸がん検診が『陽性』だった」 「でも、目に見えるような血便は一度も出ていないし、どこもお腹は痛くない」 「たまたま痔の血が混ざっただけじゃないか? 来年まで様子を見てもいいだろう……」
働く世代の多い広島市の中心である八丁堀で専門外来で診療を続けていると、このようなご相談をよくいただきます。しかし、専門医として最も強くお伝えしたいのは、「血便(自覚症状)がない今こそが、あなたの寿命を延ばす最大のチャンスである」ということです。
なぜ症状がないのに精密検査が必要なのか、この検査の仕組みや目的、歴史的な背景や広島市の医療体制の現状も踏まえながら解説します。
目次
「便潜血陽性」の意味とは?
便潜血検査の目的と仕組み;なぜ、わざわざ「便」を調べるのか
まず便潜血検査の最大の目的は、「症状が出る前の段階で大腸がんやポリープを見つけ出し、大腸がんによる死亡を防ぐこと」にあります
大腸がんは早期発見できれば治癒率が非常に高い病気ですが、初期には自覚症状がほとんどありません。この検査は、健康な集団の中から「精密検査(大腸カメラ)を受けるべき人」を効率よく選び出す(スクリーニング)ための「ふるい」の役割を果たしています
検査の仕組み:現代は「人間の血」だけを狙い撃ちします。現在、日本で広く行われているのは「免疫便潜血検査(FIT)」という方法です。目に見えないほどの微量な出血でも検知することが可能で、便が病変(がんやポリープ)の横を通り過ぎる際に擦れて血液が付着することを逆手にとり、付着した血液を検知することで病変を見つける手掛かりにする検査です。
便検査の歴史
1950年代から化学的な方法(グアヤク法など)による便潜血検査が始まりました。当時は食事の影響を受けやすく、検査の数日前から肉や特定の野菜を食べないなどの厳しい制限が必要でした。1980年代から日本でも胃がん検診に併用する形で大腸がんのスクリーニングが模索され始めました。1992年(平成4年)になり、老人保健法(当時)に基づき、日本で公的な「大腸がん検診」として制度化されました。この際、食事制限が不要で精度の高い「免疫法(FIT);別コラム」が採用され、全国的に普及しました。この制度化により、現在のように「自宅で2日分採るだけ」という手軽なスタイルが確立されました。 便潜血検査は医学が進歩した現在でも手軽さと正確さから継続して使用される非常に有用な検査なのです。
「1回だけ陽性」はラッキーなサイン
2日分の便のうち、1日分だけが陽性だった場合、「誤差だろう」と考えてしまいがちです。しかし、がんは毎日出血しているわけではありません。たまたま出血した日の便が検査に引っかかったということは、「早期発見ができる幸運なタイミングで信号が灯った」と捉えるべきなのです。実際に大腸癌の人に便潜血検査を行っても1回のみなら30‐40%、2回検査しても70-80%しか陽性にならないというデータもあります。症状がなくとも便検査が1回でも陽性となった場合には腸に病気が潜んでいる可能性は十分にあると言えます。
なぜ「血便がない」からといって放置してはいけないのか
「痛みがない」「血が見えない」ことは、決して「病気がない」ことの証明にはなりません。そのために便潜血検査が存在しています。
大腸は「沈黙の臓器」
大腸の粘膜には痛みを感じる神経がほとんどありません。そのため、がんがかなり大きく進行して、腸の内腔を塞いでしまう(腸閉塞)状態や腸の外にまで広がった状態まで、腹痛などの症状は出ません。 「痛くないからまだ大丈夫」という判断は、大腸がんにおいては「手遅れになるまで待ちます」と言っているのと同じことなのです。
広島県の大腸がん罹患状況
広島県内においても、大腸がんは男女ともに罹患数が多い疾患ですが、大腸がん検診において広島県は十分とは言えない実情があります。広島県では便潜血検査が陽性になった方で実際に精密検査を行なった方は約7割にとどまります。約3割の方は陽性でも放置していることになります。しかし、早期に発見できれば90%以上の確率で治癒が望める病気でもあります。検診で「要精密検査」となった段階は、まだ完治が十分に目指せる段階であることが多いのです。精密検査の受診率が上がれらない理由として、要精密検査になっても大腸カメラに「恥ずかしい」、「きつい」などのイメージから精密検査を受けない方が多いと思われます。
「痔で陽性になった」という自己判断は危険
検査の「ハードル」以外に精密検査をためらう理由として最も多いのが、「自分は痔持ちだから、今回も痔の血だろう」という思い込みです。
確かに、痔(内痔核など)によって陽性反応が出ることは多々あります。しかし「痔があることと、大腸がんがないことは無関係」だということです。
- 痔と大腸がんが「両方存在」しているケースは非常に多い
- 痔の出血だと思い込んでいる間に、その奥(直腸やS状結腸)でがんが進行してしまう
「痔のせいか、がんのせいか」を判断するには、「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」で直接、腸や肛門をみる方法以外にはありません。
データで見る「広島の大腸がんと便潜血検査」
広島県や広島市の統計を見ると、大腸がん検診の重要性がより鮮明になります。
広島県での死亡原因 第2位(部位別)
広島県の2024年の統計(75歳未満年齢調整死亡率)によると、大腸がんは男女ともに「死亡原因の第2位」(1位は肺がん)となっています。また、女性においては大腸がんが死亡原因の第1位となる年もあり、注意が必要な疾患です。
「精密検査」を受けない人が約3割
広島県内のある調査データでは、検診で「要精密検査」と判定された人のうち、実際に精密検査(大腸カメラなど)を受けた人は約71.6%でした。 つまり、陽性と出た人のうち約3割(約4人に1人以上)が、せっかくの発見チャンスを逃している計算になります。先ほども述べたように便潜血が1回でも陽性になった場合には癌のサインであることも多いです。陽性となったら必ず精密検査を受けることをお勧めします。
広島市で精密検査を受ける際の流れと安心ポイント
「要精密検査(二次検査)」と言われたら、まずは消化器内科・内視鏡クリニックを受診し、大腸カメラの予約を取りましょう。
広島市中心部に位置する当院の内視鏡専門の体制
広島市中心部の八丁堀に位置する当院は、そのアクセスの良さだけでなく、複数の消化器内視鏡専門医が常に対応できる体制を土曜日、日曜日も整備しております。自宅や職場の近く(それ以外でも構いません)など受診しやすい場所での受診が不安な方では、一度当院にお越しください。実際、家の近くの医療機関では人目を気にしてしまうため、県外である当院にわざわざお越しになる患者さんも多くいらっしゃいます。
検査は「怖い・辛い」から「楽に受ける」へ
今の内視鏡検査は、患者さんの負担を減らすための工夫が随所になされています。
- 鎮静剤の使用: 広島の多くのクリニックでは、点滴による麻酔(鎮静剤)を使用し、眠っている間に検査を終えることができます。
- 炭酸ガス送気: 検査後のお腹の張りを抑え、速やかにガスが吸収されるシステムが普及しています。
- 日帰り治療: ポリープが見つかった場合、その場で切除して「がん予防」が完了するクリニックも多いです。
- プライバシーへの配慮:個別の下剤スペースやトイレが用意されている医療機関も多く存在します。読書をしたり、テレビ、動画、映画などをみたりしながらリラックスした状態で検査の準備を行うことができます。また自宅での準備も可能な場合が多いです。
的中率はどのくらい? 検査を受けるメリット
便潜血陽性で精密検査を受けた結果、実際に「がん」が見つかる人は100人中2〜5人程度です。この数字を聞いて「なら受けなくても大丈夫かな」と思うかもしれませんが、実はもう一つの重要な数字があります。
それは、「がん化する手前のポリープ」に関しては約30〜50%の確率で見つかるという点です。精密検査は、がんを見つけるためだけのものではありません。「将来がんになる芽(ポリープ)」を今のうちに治療しておくための、究極の予防なのです。
まとめ:精密検査は「安心」のための最短距離
広島市の大腸がん検診で「要精密検査」の通知が届いたことは、決して「がん宣告」ではありません。むしろ、将来の健康を守るための早めの通知です。この便潜血検査が陽性の結果があれば、大腸カメラを保険診療(3割負担以下)で受けられる明確な理由になります。
血便がなくても、痛みがなくても、一度はカメラで腸の中をしっかり確認しましょう。「何事もなかった」と確認できれば、数年間は大きな安心感を持って過ごすことができます。
広島八丁堀内科・胃腸内視鏡クリニックの専門医は、あなたの不安に寄り添い、丁寧な検査を約束します。まずは通知書を持って、当院の専門医へ相談に行ってみてください。


