診療コラム

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便秘でお腹が張るのはなぜ?ガスがたまる原因と対処法

 

「便秘が続いてお腹がパンパンに張って苦しい」「おならばかり出て、すっきりしない」。便秘の悩みは「便が出ないこと」だけではありません。お腹の張り(腹部膨満感)やガスのつらさは、便秘の方に多くみられる症状です。

お腹の張りは、腸にたまった便やガスだけでなく、腸がガスを感じる「感じやすさ」や、食べ方、ストレスなども関係しています。この記事では、便秘でお腹が張る・ガスがたまる理由と、つらいときにすぐできる対処法、食事や生活習慣でのコツ、受診の目安を、消化器内科の視点から解説します。

便秘でお腹が張る・ガスがたまる仕組み

腸内のガスは2つのルートから生まれる

腸の中のガスは、主に次の2つから生まれます。

口から飲み込んだ空気

食事や会話、つばを飲み込むときに入る空気です。成分の多くは窒素や酸素です。

腸内細菌がつくるガス

腸内細菌が、消化しきれなかった食べ物の成分を分解(発酵)するときに、水素や二酸化炭素、メタンなどが発生します。

ふだん、これらのガスは腸の動きによって運ばれ、おならとして出たり、一部は血液に吸収されて呼気から出たりします。ガスが「つくられる量」と「出ていく量」のバランスが崩れると、お腹が張りやすくなります。

便秘があるとバランスが崩れやすい

便秘になると、次のような理由でガスがたまりやすくなります。

 

  1. 便が腸に長くとどまり、腸内細菌による発酵が進んでガスが増える
  2. たまった便が「ふた」のようになり、ガスが先に進みにくくなる
  3. 腸の動きそのものが鈍く、ガスや便を送り出す力が弱まっている

「ガスの量」より「感じやすさ」が原因のことも

お腹の張りに悩む方の腸内ガスを調べると、ガスの量が健康な人と大きく変わらないことも少なくありません。腸がガスや便による刺激を敏感に感じとる状態(内臓知覚過敏)や、ガスがうまく先に送られず一部に停滞する状態でも、強い張りとして感じられます。そのため、ガス対策と同時に、腸の動きや感じやすさを整えることも大切です。

お腹の張りを強める主な原因

便秘によるお腹の張りには、便秘そのもの以外にも、次のような要因が重なっていることがよくあります。

 

原因

張りが起こる理由

心当たりのサイン

便秘(便の停滞)

発酵が進んでガスが増え、便がガスの通り道をふさぐ

排便の間隔が空くほど張りが強くなる

空気の飲み込みすぎ(呑気)

飲み込んだ空気が胃や腸にたまる

げっぷが多い。早食い、ガムをよく噛む、炭酸飲料が多い

ガスを生みやすい食べ物

腸内細菌が発酵させやすい成分が多いと、ガスが増える

豆類・いも類・玉ねぎ・乳製品・人工甘味料などをとった後に張る

食物繊維の急な増加

腸内細菌のエサが急に増え、ガスが一時的に増える

便秘対策で食物繊維を増やし始めてから張りが強くなった

ストレス・自律神経の乱れ

腸の動きが乱れ、腸の感じやすさも高まる(脳腸相関)

緊張する場面や忙しい時期に悪化する

運動不足・長時間の座りっぱなし

腸の動きが鈍り、ガスが移動しにくくなる

在宅勤務やデスクワークで歩く量が少ない

ひとつだけでなく、いくつかの要因が重なって張りが強くなっていることも少なくありません。自分に当てはまるものから見直してみましょう。

お腹の張りやガスの背景にある病気

便秘による張りの多くは生活習慣の見直しで和らぎますが、次のような病気が関係していることもあります。

過敏性腸症候群(IBS)

腸に炎症や腫瘍などの異常がないにもかかわらず、腹痛やお腹の張りとともに、便秘や下痢などの便通異常が続く病気です。日本人の10〜15%程度にみられるとされ、20〜40歳代に多い傾向があります。便秘型では、「排便すると腹痛や張りが少し楽になる」のが特徴のひとつです。

機能性腹部膨満

検査で明らかな異常がないのに、お腹の張りやガスの不快感が主な症状として続く状態です。ガスの量だけでなく、腸の感じやすさや、ガスを送り出す動きの乱れが関係していると考えられています。

呑気症(どんきしょう)

無意識のうちに空気をたくさん飲み込み、げっぷやお腹の張りが続く状態です。ストレスや緊張、歯を食いしばる癖などが関係することがあります。

大腸の病気(大腸がん・腸閉塞など)

大腸がんや大きなポリープで腸の通り道が狭くなると、便やガスが通りにくくなり、お腹の張りとして現れることがあります。また、腸がつまる「腸閉塞」では、強い張りに加えて腹痛や嘔吐が起こり、緊急の治療が必要です。

 

こうした病気は頻度としては多くありませんが、「いつもと違う張り」や、次の章で紹介する症状を伴う場合は、早めに確認しておきましょう。

 

つらいお腹の張りを今すぐ和らげる方法

お腹が張って苦しいときは、ガスを動かして外に出しやすくすることがポイントです。強い腹痛や嘔吐がない場合に、次の方法を試してみてください。

少し歩く

5〜10分ほどゆっくり歩くだけでも腸が動き、ガスが移動しやすくなります。

お腹を温める

腹巻きや温かいタオル、入浴などでお腹を温めると、腸の緊張がゆるみやすくなります。熱すぎるものを長時間当てるのは避けましょう。

「の」の字マッサージ

おへそのまわりを、時計回り(右下→右上→左上→左下)に手のひらでやさしくさすります。大腸の流れに沿って、ガスや便を送り出すイメージです。

ガスを出しやすい姿勢をとる

仰向けに寝て両ひざを抱え、胸に引き寄せて20〜30秒ほどキープします。横向きに寝て、ひざを軽く曲げる姿勢も楽になりやすい姿勢です。

温かい飲み物をゆっくり飲む

白湯などを少しずつ飲みます。炭酸飲料は空気が増えるため、張っているときは控えましょう。

おならを我慢しすぎない

我慢が続くとガスが腸にたまり、張りが強くなります。

 

※妊娠中の方、お腹の手術を受けたことがある方は、マッサージや姿勢による対処を行う前に医師に相談してください。強い腹痛や嘔吐を伴う場合は、無理にマッサージをせず、医療機関を受診してください。

食事で張り・ガスを減らすコツ

便秘の改善には食物繊維が欠かせませんが、お腹の張りやガスが強い方は、「何を増やすか」と同じくらい「どう増やすか」が大切です。

食物繊維は種類を選び、少しずつ増やす

急に大量に増やすとガスが増えやすいため、1〜2週間かけて少しずつ増やします。

張りが強い方は、ごぼうなどの不溶性食物繊維を一度にたくさんとるより、オートミール・海藻・キウイフルーツなど、水溶性食物繊維を多く含む食品から始めると張りにくい傾向があります。

食物繊維を増やすときは、水分も一緒にとりましょう。

ガスを生みやすい食べ物を「量」で調整する

次のような食べ物は、腸内で発酵しやすく、人によってはガスや張りの原因になります。

 

種類

主な食べ物

豆類・いも類

大豆、ひよこ豆、さつまいも

一部の野菜

玉ねぎ、にんにく、キャベツ、ブロッコリー

乳製品

牛乳など(乳糖でお腹がゴロゴロしやすい方)

甘味料

ソルビトール・キシリトールなどの糖アルコール(ガム、低カロリー菓子)

飲み物

炭酸飲料、ビール

これらは体によい食品も多いため、すべてを避ける必要はありません。食べた後の張りを観察しながら、量や組み合わせを調整しましょう。食べたものとお腹の張りをメモしておくと、自分に合わない食品を見つけやすくなります。

なお、過敏性腸症候群の方では、発酵しやすい糖質(FODMAP)を一時的に減らす食事法で症状が軽くなることがあります。ただし、自己流で長く制限すると栄養が偏るおそれがあるため、医師や管理栄養士に相談しながら行いましょう。

空気を飲み込まない食べ方

 

  • よく噛んで、ゆっくり食べる
  • 食事中に話しすぎない、飲み物で流し込まない
  • ガムを長時間噛む習慣を控える
  • ストローを使わずに飲む

※便秘によい食べ物の選び方は「便秘にいい食べ物とは?食物繊維・水分のとり方と注意点」で詳しく解説しています。(内部リンク設置予定)

生活習慣で腸のガスをためにくくする

こまめに体を動かす

1日20〜30分程度のウォーキングなど、続けやすい運動を習慣にしましょう。デスクワークの方は、1時間に1回立ち上がって歩くだけでも違います。

排便のリズムをつくる

朝食後は腸が動きやすいタイミングです。便意がなくても、毎朝トイレに座る時間をつくりましょう。便意を感じたら我慢しないことも大切です。

ストレスをためこまない

深呼吸、軽いストレッチ、ぬるめのお湯での入浴など、自分に合ったリラックス方法を取り入れましょう。緊張すると、つばと一緒に空気を飲み込みやすくなります。

睡眠をしっかりとる

睡眠不足は自律神経を乱し、腸の動きにも影響します。

体を冷やさない

お腹や腰まわりを冷やさない服装を心がけましょう。

こんなときは受診を|お腹の張りの受診の目安

お腹の張りは、症状によって受診を急ぐ必要があるかどうかが変わります。

 

受診の目安

症状

すぐに医療機関へ(夜間・休日も)

強い腹痛がある/吐き気・嘔吐がある/おならも便もまったく出ない/お腹が急に大きくふくらんだ/発熱を伴う/大量の血便がある

早めに消化器内科へ

血便・黒っぽい便がある/便が細くなった、便通が急に変わった/意図しない体重減少や貧血がある/お腹にしこりを触れる/張りが2週間以上続く、または悪化している/40歳以上で大腸の検査を受けたことがない

生活習慣の見直しを続けつつ相談を

張りやガスのせいで仕事や外出に支障がある/対処法を続けても改善しない

「お腹の張りくらいで受診していいのかな」と迷う方も多いですが、張りやガスで日常生活がつらい状態が続くなら、それ自体が相談してよい理由です。

消化器内科での検査と治療

原因を確認するための検査

まず、症状の経過や便通、食事、服用中のお薬などを詳しくうかがい、お腹の診察を行います。そのうえで、必要に応じて次のような検査を組み合わせます。

血液検査

貧血や炎症の有無などを調べます。

腹部レントゲン・腹部エコー

腸にたまった便やガスの状態、腸閉塞の有無などを確認します。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸の粘膜を直接観察し、腫瘍や炎症など、腸の通り道をふさぐ病気がないかを確認します。

原因に合わせた治療

検査で大きな病気がないことを確認したうえで、便秘とお腹の張りの両方を和らげる治療を行います。食事や生活習慣の見直しを基本に、症状に応じて、便をやわらかくするお薬、腸の動きを助けるお薬、腸内環境を整える整腸剤、漢方薬などを組み合わせます。

便秘薬の中には、種類や使い方によってお腹の張りや腹痛が出やすいものもあります。市販薬で張りが強くなる場合は、自己判断で量を増やさず、医師にご相談ください。体質や症状に合ったお薬を選ぶことで、張りの悩みが軽くなることも少なくありません。

まとめ|お腹の張りは「ガスの量」と「腸の動き・感じやすさ」の両面から対策を

便秘でお腹が張るのは、便の停滞で発酵が進んでガスが増え、そのガスが腸を進みにくくなるためです。ガスの量だけでなく、腸の感じやすさや動きの乱れ、空気の飲み込み、ストレスも張りを強めます。

つらいときは、軽く歩く、お腹を温める、「の」の字マッサージ、ひざを抱える姿勢などでガスを動かしましょう。食物繊維は少しずつ増やし、ガスを生みやすい食品は量で調整します。

強い腹痛・嘔吐・便もガスも出ない場合はすぐに、血便・体重減少・張りが続く場合は早めに受診しましょう。

お腹の張りやガスは、周りに相談しにくい悩みかもしれません。原因を確かめ、体に合った対処をとることで、毎日を過ごしやすくすることができます。ひとりで抱え込まず、気軽にご相談ください。