診療コラム

COLUMN

便秘にいい食べ物とは?食物繊維・水分のとり方と注意点

 

便秘を食事で整えるカギは、食物繊維の「量と種類」、水分の「量とタイミング」、そして食事の「リズム」の3つです。「野菜を食べているのにすっきりしない」「何を食べればいいかわからない」という方に向けて、消化器内科の視点から、便秘にいい食べ物の具体例と、食物繊維・水分のとり方、気をつけたい注意点をまとめました。

便秘対策の食事は「食物繊維・水分・食事のリズム」の3本柱

食事で便秘を整えるときは、食物繊維・水分・食事のリズムの3つをセットで見直すことが基本です。どれか1つだけを頑張っても、ほかが不足していると効果を感じにくくなります。便秘症の診療ガイドラインでも、食事を含む生活習慣の見直しは便秘への対応の土台と位置づけられています。

 

柱

腸での役割

1日の目安(成人)

食物繊維

便のかさを増やし、適度なやわらかさを保つ

男性20〜22g以上、女性18g以上

水分

便に水分を与え、腸内を移動しやすくする

飲み物から1.2〜1.5L程度

食事のリズム

食べることで腸が動き出すきっかけをつくる

1日3食、とくに朝食をとる

以下では、この3本柱を順に具体的に解説します。

食物繊維のとり方|1日の目標量と2つの種類

1日の目標量は男性20〜22g以上、女性18g以上

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の食物繊維の目標量を男性20〜22g以上、女性18g以上(18〜64歳)としています。生活習慣病予防の観点からは、1日25g以上が理想とも考えられています。

一方、令和元年の国民健康・栄養調査では、実際の摂取量は1日18.4gにとどまっています。多くの方にとって、まずは「今より1日5gほど増やす」ことが現実的な目標です。

水溶性と不溶性、2つの食物繊維の違い

食物繊維は、水に溶ける「水溶性」と、水に溶けにくい「不溶性」に大きく分けられます。便秘対策では、両方をバランスよくとることが大切です。

種類

腸でのはたらき

多く含む食品

水溶性食物繊維

水分を含んでゲル状になり、便をやわらかく保つ。
腸内細菌のエサになり、腸内環境を整える

わかめ・めかぶ・もずくなどの海藻、こんにゃく、オートミール、大麦(もち麦)、キウイフルーツ、りんご

不溶性食物繊維

水分を吸ってふくらみ、便のかさを増やす。
腸を刺激してぜん動運動を促す

ごぼうなどの根菜、きのこ類、豆類、玄米・全粒粉などの穀類、さつまいも

バランスの目安として、水溶性1:不溶性2程度がよく挙げられます。ただし、ほとんどの食品は両方を含んでいます。細かく計算するより、穀類・野菜・きのこ・海藻・豆・果物を毎日少しずつ組み合わせるほうが、結果的にバランスよくとれます。

無理なく増やすコツは「主食」と「汁物」

主食を置き換える

毎食とる主食は、食物繊維を増やす近道です。白米に玄米や雑穀、もち麦を混ぜる、パンを全粒粉パンにするなどの工夫がおすすめです。慣れないうちは、白米1合に雑穀大さじ1杯程度から始めましょう。

汁物を具だくさんにする

味噌汁やスープに、きのこ・海藻・根菜を加えると、食物繊維と水分を同時にとれます。

少しずつ増やす

急に大量に増やすと、お腹の張りやガスの原因になることがあります。1〜2週間かけて段階的に増やしましょう。

便秘にいい食べ物リスト|食品群別にチェック

便秘にいい食べ物は、特定の「これさえ食べればいい」食品ではなく、食物繊維や腸内環境を整える成分を含む食品群の組み合わせです。毎日の献立に、下の表から2〜3群ずつ取り入れることを意識してみてください。

 

食品群

代表的な食べ物

取り入れ方のポイント

主食(穀類)

玄米、雑穀ごはん、もち麦、オートミール、全粒粉パン

毎食とるため、置き換えるだけで摂取量を底上げしやすい

野菜・いも類

ごぼう、ブロッコリー、オクラ、かぼちゃ、さつまいも

加熱するとかさが減り、たくさん食べやすい

きのこ類

しめじ、えのき、しいたけ、まいたけ、きくらげ

低カロリーで汁物・炒め物に足しやすい

海藻・こんにゃく

わかめ、めかぶ、もずく、ひじき、こんにゃく

水溶性食物繊維が豊富。酢の物や味噌汁で手軽に

豆・大豆製品

納豆、おから、大豆の水煮、ひよこ豆

不溶性食物繊維とたんぱく質を一緒にとれる

果物

キウイフルーツ、プルーン、りんご、バナナ、みかん

1日1個(拳1つ分)を目安に、朝食や間食で

発酵食品

ヨーグルト、納豆、味噌、ぬか漬け

食物繊維と組み合わせると腸内環境づくりに役立つ

研究報告があるキウイフルーツ・プルーン

キウイフルーツやプルーンは、臨床研究で排便回数の増加や便の硬さの改善が報告されている食品です。キウイフルーツは1日2個程度、プルーンは数粒程度から、毎日の食事に取り入れてみてください。また、市販の食物繊維サプリメントに使われるサイリウム(オオバコの種皮)も、同様の報告があります。

発酵食品は「補助役」として

ヨーグルトや納豆、ぬか漬けなどの発酵食品は、腸内細菌のバランスを整えるはたらきが期待されています。ただし、効果の感じ方には個人差があり、発酵食品だけで便秘が改善するとはいえません。食物繊維と水分を基本にしたうえで、補助的に取り入れるのが現実的です。ヨーグルトにキウイやバナナ、オートミールを加えるなど、食物繊維と組み合わせるのがおすすめです。

水分のとり方|量・タイミング・飲み物の選び方

食物繊維を増やすなら、水分も一緒に増やすことが欠かせません。とくに不溶性食物繊維は腸の中で水分を吸ってふくらむため、水分が足りないと便がかえって硬くなることがあります。

量の目安は飲み物から1日1.2〜1.5L程度

食事に含まれる水分とは別に、飲み物から1日1.2〜1.5L程度をとることを目安にしましょう。汗をかく季節や運動をした日は、もう少し多めに補給します。一度にたくさん飲むより、コップ1杯(約200ml)をこまめに飲むほうが体に行きわたりやすくなります。

※心臓や腎臓の病気などで水分制限を受けている方は、主治医の指示に従ってください。

飲むタイミング

起床後すぐにコップ1杯

空っぽの胃に水分が入ると、腸が動くきっかけになります。冷たすぎない水や白湯、牛乳がおすすめです。

食事中・食間

食事のたびに1杯、間食のタイミングにも1杯を習慣にすると、無理なく量を確保できます。

入浴前後・運動の前後

汗で失われる水分を補います。

飲み物の選び方

基本は水やお茶(麦茶など)です。味噌汁やスープなどの汁物も、食物繊維と水分を同時にとれる優れた一品です。コーヒーや緑茶は適量なら問題ありませんが、カフェインには利尿作用があるため、水分補給はそれ以外の飲み物も組み合わせましょう。アルコールは体の水分を奪いやすいため、飲む量を控えめにし、飲んだ日は水も一緒にとることが大切です。

便秘を悪化させやすい食べ物・食習慣

「何を食べるか」と同じくらい、「どう食べているか」も便通に影響します。次のような食習慣に心当たりがあれば、できるところから見直してみましょう。

朝食を抜く

食べ物が胃に入ると大腸が動き出す「胃・結腸反射」は、朝にもっとも起こりやすいとされています。朝食を抜くと、この自然な便意のチャンスを逃してしまいます。

食事量が少なすぎる

極端な食事制限や糖質制限で食事の量が減ると、便のもとになる量そのものが不足します。主食を抜くと、食物繊維の摂取量も大きく減ります。

脂っこい食事・加工食品が中心

揚げ物やファストフード、加工肉、スナック菓子などに偏ると、食物繊維が不足しがちです。

精製された主食ばかり

白米・白いパン・うどんなどだけでは、食物繊維が不足しやすくなります。

お酒の飲みすぎ

水分不足や腸内環境の乱れにつながります。

食事の時間が不規則

食べる時間がばらばらだと、腸のリズムも整いにくくなります。

 

なお、適量の油は便をスムーズに送り出す助けになるため、「便秘だから油はゼロに」と極端に控える必要はありません。

食物繊維が逆効果になることも|こんなときは注意

食物繊維は便秘対策の基本ですが、状態によっては増やすことで症状が悪化する場合があります。次に当てはまる方は、とり方を工夫するか、医師に相談してください。

 

こんな状態のとき

起こりやすいこと

食事の工夫

便が硬くコロコロしている

不溶性食物繊維を急に増やすと、便のかさだけ増えて出しにくくなる

海藻・オートミール・果物など水溶性を中心にし、水分をしっかりとる

お腹の張りやガスが気になる

食物繊維が腸内で発酵し、張りが強まる

量を少しずつ増やす。豆類やいも類を一度にたくさんとらない

腹痛と便秘・下痢をくり返す

過敏性腸症候群の可能性があり、特定の食品で症状が出やすい

自己流で食事を制限せず、医療機関で相談する

食物繊維を増やしても1〜2週間変化がない

腸の動きそのものが低下しているタイプの可能性がある

食事だけで抱え込まず、受診して原因を確認する

また、腸の手術を受けたことがある方や、腎臓病で果物などの制限を受けている方は、食事内容を変える前に主治医にご確認ください。

便秘対策の1日の献立例

ここまでのポイントを、1日の献立に落とし込んだ例です。すべてを真似する必要はなく、「朝食に1品足す」「主食を置き換える」など、取り入れやすいところから始めてみてください。

 

タイミング

献立例

ポイント

起床後

白湯または水をコップ1杯

腸が動き出すきっかけをつくる

朝食

雑穀ごはん、わかめと豆腐の味噌汁、納豆、キウイフルーツ

食物繊維・水分・発酵食品をまとめてとる

昼食

もち麦入りおにぎり、具だくさん豚汁、ひじきの煮物

外食・コンビニなら、もち麦おにぎり+サラダ+カップ味噌汁でも

間食

ヨーグルト+プルーン、またはバナナ

発酵食品と食物繊維を組み合わせる

夕食

ごはん、焼き魚、きのこのソテー、ごぼうサラダ、もずく酢

不溶性(きのこ・ごぼう)と水溶性(もずく)を両方そろえる

食事の合間にもコップ1杯ずつ水分をとり、1日を通して飲み物から1.2〜1.5L程度を目指しましょう。

食事を見直しても改善しないときは消化器内科へ

食事の工夫を2〜4週間ほど続けても便通が変わらない場合や、次のような症状がある場合は、食事だけで様子を見ずに消化器内科を受診してください。便秘の背景に、大腸の病気が隠れていることがあるためです。

 

  • 血便や黒い便が出た
  • 急に便秘になった、便が細くなった状態が続く
  • 便秘と下痢をくり返す
  • 腹痛、体重減少、貧血がある
  • 便潜血検査(検便)で陽性といわれた

必要に応じて大腸カメラ(大腸内視鏡検査)で腸の状態を確認し、原因に合わせて食事指導やお薬による治療を検討します。

まとめ|便秘にいい食事は「組み合わせ」と「続けること」

便秘にいい食事は、特定の食べ物に頼るのではなく、食物繊維・水分・食事のリズムをバランスよく整えることが基本です。

食物繊維

男性20〜22g以上、女性18g以上が目標。主食の置き換えと具だくさんの汁物で、少しずつ増やす

食べ物の選び方

穀類・野菜・きのこ・海藻・豆・果物・発酵食品を組み合わせる

水分

飲み物から1日1.2〜1.5L程度。起床後のコップ1杯を習慣に

食習慣

朝食を抜かない、極端な食事制限をしない

注意点

便が硬い・お腹が張るときは、水溶性を中心に量を調整する

 

食事の改善は、2〜4週間ほど続けて様子をみることが大切です。それでも改善しない場合や、血便などの気になる症状がある場合は、ひとりで悩まず消化器内科にご相談ください。