診療コラム

COLUMN

便秘は大腸がんのサイン?注意したい症状と検査の必要性

 

便秘のほとんどは、食事や生活習慣、腸の動きの低下などによるもので、大腸がんが原因のことはまれです。ただし、「最近になって便通が変わった」「便に血が混じる」「便が細くなった」といった変化がある場合は、大腸の病気が隠れていないかを一度確認しておくと安心です。

この記事では、便秘と大腸がんの関係、受診を考えたい症状のサイン、血便の見分け方の考え方、そして大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けるタイミングについて、消化器内科の視点からわかりやすく解説します。

便秘の人は大腸がんになりやすい?便秘と大腸がんの関係

便秘そのものが大腸がんの原因になるかどうかについては、これまでの研究でも明確な結論は出ていません。長年の便秘があるからといって、それだけで大腸がんを過度に心配する必要はありません。

一方で、その逆、つまり大腸がんが原因で便秘などの便通の変化が起こることはあります。注意したいのは「便秘があるかどうか」よりも、「以前と比べて便通が変わったかどうか」です。

 

便秘のタイプ

大腸の病気との関係

若いころから続いている便秘で、状態が大きく変わっていない

多くは食事・生活習慣や腸の動きによる便秘(機能性便秘)

最近になって始まった、または急に悪化した便秘

腸の中に病変がないか、一度確認しておきたい

血便・便が細い・体重減少などを伴う便秘

早めに消化器内科を受診し、検査を検討する

大腸がんは日本人に多いがんの一つで、とくに40歳代以降で増えていきます。便通の変化をきっかけに検査を受けることは、病気の早期発見だけでなく、「異常がないことを確認して安心する」ためにも役立ちます。

大腸がんで便通が変わる仕組みと部位別の症状

がんが腸の内側を狭くすることで起こる

大腸がんは大腸の粘膜から発生し、大きくなると腸の内側(内腔)を狭くします。すると便が通りにくくなり、便秘や、便秘と下痢をくり返すといった便通の変化が起こることがあります。腸は動いているため、ときどき通りがよくなって便が出ることもあり、「体質の便秘」と思って様子を見てしまうケースも少なくありません。

症状はがんのできる場所で異なる

大腸は、口側から盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸と続きます。肛門に近い左側(下行結腸〜直腸)は便が固まってくる部分のため、便通の変化や血便として症状が出やすくなります。

 

がんができる場所

現れやすい症状

右側の大腸(盲腸・上行結腸・横行結腸)

便がまだやわらかいため症状が出にくい。貧血やお腹のしこりで気づくことがある

左側の大腸(下行結腸・S状結腸)

便秘、便秘と下痢のくり返し、血便、お腹の張り

直腸

血便、便が細くなる、残便感(出しきれない感じ)

(参考:大腸癌研究会「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン」)

なお、早期の大腸がんは、ほとんど自覚症状がありません。症状がなくても、年齢に応じて検診を受けることが大切です。

 

受診を考えたい便秘のサイン|チェックリスト

次のような変化がある場合は、自己判断で様子を見続けず、消化器内科への相談をおすすめします。どれも大腸がん以外の原因で起こることが多い症状ですが、原因を確認しておくことが大切です。

 

最近になって便秘が始まった、または急にひどくなった

便秘と下痢をくり返すようになった

便に血が混じる、便の表面に血がつく、黒っぽい便が出る

便が以前より細くなった状態が続いている

排便後もすっきりしない感じ(残便感)が続く

お腹の張りや腹痛をくり返す

原因のわからない体重減少や貧血(健診での指摘を含む)がある

健診の便潜血検査で「陽性」といわれた

家族(親・きょうだい・子)に大腸がんになった人がいる

40歳以上で、一度も大腸の検査を受けたことがない

 

とくに、血便・体重減少・便潜血陽性のいずれかに当てはまる場合は、早めの受診をおすすめします。

便秘で血便が出たら?痔によるものとの違い

便秘の方に血便が出た場合、多くは硬い便で肛門が傷つく「切れ痔(裂肛)」や、いきみによる「いぼ痔(痔核)」が原因です。ただし、血便の見た目だけで痔か大腸の病気かを見分けることはできません。

 

血便の特徴

考えられる主な原因

排便時にトイレットペーパーに鮮やかな赤い血がつく、肛門が痛む

切れ痔(裂肛)、いぼ痔(痔核)など肛門の病気

便の表面に血がつく、便に血が混じる

肛門の病気のほか、直腸やS状結腸のポリープ・がん

暗い赤色の血や粘液が混じる

大腸の炎症(大腸炎など)、ポリープ・がん

黒っぽいタール状の便

胃・十二指腸など、より口側の消化管からの出血

上の表はあくまで目安です。痔と大腸がんが同時にあることもあり、「いつもの痔だろう」と自己判断していた方の検査で、大腸の病変が見つかることもあります。

とくに、40歳以上の方、初めて血便が出た方、血便が続く方、便通の変化を伴う方は、肛門の診察とあわせて大腸内視鏡検査で大腸全体を確認しておくと安心です。大量に出血した場合や、ふらつき・動悸を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。

大腸がんは早期発見で治療の選択肢が広がる

大腸がんは、早い段階で見つかるほど治療の選択肢が広がり、体への負担も少なく済む病気です。院内がん登録などの統計でも、早期に見つかったがんほど5年生存率が高いことが示されています。

大腸がんの多くは、「腺腫」という良性のポリープが時間をかけて大きくなり、がん化して発生すると考えられています。そのため、がんになる前のポリープの段階で見つけて切除することが、大腸がんの予防につながります。

 

見つかった段階

主な治療

体への負担

ポリープ(腺腫)

大腸内視鏡検査中に切除できることが多い

小さい。日帰りで対応できる場合もある

早期がん(粘膜〜粘膜下層の浅い部分)

内視鏡治療で切除できる場合がある

比較的小さい

進行がん

外科手術、抗がん剤治療などを組み合わせる

大きくなりやすい

早期の大腸がんやポリープは、ほとんど症状がありません。症状が出る前に検診や検査を受けることが、早期発見のためにもっとも確実な方法です。

便秘で大腸内視鏡検査を受けるべきタイミング

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、肛門から細いスコープを入れて大腸全体の粘膜を直接観察する検査です。ポリープや早期がんを見つけられるだけでなく、ポリープによってはその場で切除することもできます。

便秘がある方で、次のいずれかに当てはまる場合は、大腸内視鏡検査を検討しましょう。

 

  • 前の章のチェックリスト(血便、便が細い、便通の急な変化、体重減少など)に当てはまる
  • 健診の便潜血検査で陽性といわれた
  • 家族に大腸がんになった人がいる
  • 40歳以上で、一度も大腸の検査を受けたことがない
  • 生活習慣の改善や便秘薬でも、便秘がなかなか改善しない

大腸がんにかかる人は40歳代から増え始めるため、国の大腸がん検診も40歳以上が対象になっています。症状がなくても、40歳を過ぎたら一度、大腸の状態を確認しておくと安心です。検査後に次回をいつ受けるかは、ポリープの有無や大きさ、ご家族の病歴などによって変わるため、医師と相談して決めましょう。

「大腸カメラはつらそう」「下剤を飲むのが不安」という方も少なくありません。不安な点は、事前に遠慮なく医師やスタッフにご相談ください。

便潜血検査と大腸内視鏡検査の違い

便潜血検査は、症状のない方が大腸がんの可能性をふるい分けるための「入り口」の検査です。大腸内視鏡検査は、大腸の中を直接見て診断する「精密検査」です。

 

 

便潜血検査(検便)

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

目的

大腸がん検診(ふるい分け)

精密検査・診断・ポリープ切除

方法

2日分の便を採取し、目に見えない血液が混じっていないかを調べる

下剤で腸をきれいにしたあと、スコープで大腸全体を観察する

長所

手軽で体への負担がない

ポリープや早期がんを直接確認でき、その場で切除できることもある

注意点

出血していない病変は見つからないことがある

事前の食事制限と下剤の服用が必要

便潜血検査で陽性になった場合は、便潜血検査をもう一度受けて陰性を確認するのではなく、大腸内視鏡検査による精密検査を受けることが大切です。陽性になっても、多くはがん以外の原因(痔やポリープなど)ですが、原因を確かめておく必要があります。

また、便潜血検査が陰性でも、すべての病変が否定されたわけではありません。血便や便通の変化など気になる症状がある場合は、検査結果にかかわらず消化器内科にご相談ください。

検査で異常がなかった便秘はどうする?

大腸内視鏡検査で大腸の病気が見つからなかった場合は、腸の動きや生活習慣による便秘(機能性便秘)として治療を進めます。大きな病気がないとわかること自体が、安心して便秘の治療に取り組むための大切な一歩になります。

治療の基本は、食事・水分・運動・排便習慣といった生活習慣の見直しです。そのうえで、症状に応じて便をやわらかくするお薬や腸の動きを助けるお薬などを組み合わせます。便秘薬にはさまざまな種類があるため、市販薬を自己判断で長く使い続けるより、医師に相談して体に合ったお薬を選ぶことをおすすめします。

まとめ|「便通の変化」に気づいたら早めの確認を

便秘のほとんどは大腸がんが原因ではありません。ただし、大腸がんによって便通が変化することはあります。大切なのは、便秘の有無より「以前と比べて変わったかどうか」です。血便、便が細い、便秘と下痢のくり返し、体重減少、便潜血陽性などがあれば、消化器内科に相談しましょう。

便秘時の血便は痔によるものが多い一方、見た目だけでは原因を見分けられません。大腸内視鏡検査では大腸全体を直接観察でき、ポリープの段階で切除できれば大腸がんの予防につながります。

40歳を過ぎたら、症状がなくても一度大腸の状態を確認しておくと安心です。気になる症状を抱えたまま不安に過ごすより、検査で原因を確かめることが安心への近道です。