2026.05.28
健康診断で「便潜血陽性」と書かれたら

まず「便潜血」という言葉の意味から整理しましょう。
【潜血】とは「肉眼では確認できない微量の血液」を指します。通常、健康な消化管では便に血液が混じることは原則ありません。
便潜血検査は、専用スティックで採取した便を試薬と反応させ、ヒトへモグロビン(血液中のタンパク質)の有無を確かめる免疫法が主流です。食肉の血液には反応しないため、食事制限なしで受けられます。
大腸がんは進行するまで自覚症状がほとんどなく、便潜血検査で早期に発見されるケースが多くあります。
これまでの多くの研究から、便潜血検査による大腸がん検診は、早期発見そして大腸がん死亡率の減少に有効であることが証明されています。
大腸がん検診としての便潜血検査について、40歳以上では年1回受診することを厚生労働省が推奨しています。
とても簡便で安価である「検便」が、実は命に関わる大腸がんを早期に発見する重要な入り口になっています。
目次
便潜血検査の仕組みと「2日法」
2日間それぞれ便の表面をスティックでこすり取る【2日法】が標準です。大腸がんの表面からの出血は毎日均等には起こらないため、複数日採取することで見逃しを減らします。
便潜血2日法では進行がんの約80〜90%、早期がんの約50%を発見することができるといわれています。
裏を返せば、早期がんの約半数は陰性と判定される可能性もあります。便潜血検査はあくまで「スクリーニング(ふるい分け)」であり、最終診断は精密検査で行います。
「陽性」の結果が出る確率と、実際にがんが見つかる割合
厚生労働省による報告では、2019年度に自治体が実施した大腸がん検診を受けた人で、陽性(要精密検査)となった人の割合は5.92%でした。そして、陽性となった人のうち、精密検査で大腸がんと診断された人の割合は2.79%でした。
つまり、陽性と出た方の95%以上はがんではないのが実態です。ただし、安心するのではなく「精密検査でしっかり原因を調べる」姿勢が大切です。
便潜血が陽性のとき、大腸がんが見つかる確率はおよそ3%程度です。さらに大腸がんの原因となる大腸ポリープは50%前後に見つかることが全国集計で分かっています。
便潜血陽性になる原因とは?―「痔だから大丈夫」は禁物
健康診断の結果を見て「どうせ痔の血だろう」と自己判断してしまう方が多くいます。しかし、それは非常に危険な思い込みです。
「便潜血陽性=大腸がん」ではありません。便潜血検査で陽性を示すうちの約3%が大腸がんであり、ポリープからの出血が約30%、その他の大半は痔が原因で陽性となります。
便潜血陽性の主な原因は以下のとおりです。
①痔(内痔核・裂肛)
痔は便潜血陽性のよくある原因のひとつです。しかし、「痔もあり腸の病気もある」というケースもありますので、痔があっても腸の病気がないかを大腸内視鏡検査をして調べる必要はあります。痔はあくまで除外診断が大切です。(他の病気がないことを大腸カメラで除外して、痔と診断することが大切です)
②大腸ポリープ・大腸がん
ポリープの中には、放置するとがん化する可能性がある「腺腫」という病変もあり、がん化する前に大腸内視鏡での切除が推奨されます。
大腸がんは進行するまで自覚症状がほとんどなく、便潜血検査で早期に発見されるケースが多くあります。
③炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
炎症性腸疾患は若年層に多く、下痢や腹痛を伴うことが多いのですが、初期には無症状で便潜血のみ陽性となるケースもあります。
20〜40代の若い世代でも決して他人事ではない疾患群です。便潜血が出た場合は年齢に関わらず、原因を精密検査で特定することが重要です。
便潜血陽性のとき、何科を受診すべきか?
結論から申し上げます。
【消化器内科】を受診してください。健診や人間ドックで受けた便潜血検査が陽性だった場合、消化器内科を受診しましょう。
消化器内科では、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を用いた精密検査を行うことができます。
厚生労働省は、便潜血検査の陽性反応が出た場合の精密検査として大腸内視鏡検査を推奨しています。大腸内視鏡検査は、大腸の病変を直接観察できるだけでなく、必要に応じて組織のサンプルを採取できたり治療(切除)したりできるため、精密検査の中で最も精度が高く、大腸がんを予防することもできる唯一の検査であるとされています。
「内科」や「一般外来」ではダメなの?
一般内科でも便潜血の相談は可能ですが、精密検査(大腸内視鏡)を自院で行える設備がない場合には紹介状を発行して専門施設に送ることになります。「検査まで日数がかかる」「紹介先での再度問診が必要」など、受診の手間が増えることもあります。
スムーズに精密検査を受けるためには、【消化器内科・胃腸内科を標榜する内視鏡専門クリニック】を最初から選ぶことが大切です。
「もう一度、便潜血検査を受け直せばいい」は間違い
病変から常に出血しているとは限りませんので、陽性になった場合に、精密検査の代わりとして便潜血検査を再度行うことは意味がありません。
便潜血検査においては100回の陰性より、1回の陽性の方が診断的に意味があります。
1回でも陽性が確認されたら、大腸内視鏡検査に進むことが必要です。
精密検査「大腸内視鏡検査」の基本ルール
便潜血陽性後の次のステップは、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)です。「怖い」「痛そう」というイメージをお持ちの方も多いので、正しい情報をお伝えします。
大腸内視鏡検査でわかること
便潜血陽性の二次検査として、大腸カメラ検査を行い、より正確な診断をしていきます。カメラが付いた細長いスコープをお尻から入れ、大腸の異常がないかを調べる検査です。粘膜の状態を詳細に観察し、ポリープ、炎症、腫瘍などの発見が可能です。必要に応じて検査時にポリープ切除や組織採取をし、病理検査を行うこともできるため、多くの疾患の正確な診断が可能です。
大腸内視鏡検査のメリットは、診断と治療が同時にできることです。検査中にがんの元になる可能性のポリープがあれば、その場で確実に切除することで治療が完了します。
検査前の準備(前処置)について
- 検査前日は消化に良い食事を取り、当日の朝から腸管洗浄液(下剤)を決められた量・時間で服用します。
- 検査の前日には「大腸内視鏡検査食」という専用の食事を摂取することが推奨されます。
- 腸管洗浄液と呼ばれる液体を2000ml程度、2〜4時間かけて内服します。この液体を飲むのが一番つらい、という患者さんも多いです。
- 当院では専用のフロアを完備し、院内での前処置にも対応しています。自宅での準備が不安な方もお気軽にご相談ください。
鎮静剤(麻酔)を使えば苦痛は軽減できる
大腸内視鏡検査は、鎮静剤(眠り薬)を使用することで痛みや不快感を大きく和らげることができます。大腸がん/ポリープを見つけることにおいては大腸カメラより優れた検査はありません。
当院でも鎮静剤を使用した検査に対応しており、うとうとした状態のまま検査を終えられたとおっしゃる方が多いです。皆さん検査の苦痛を感じずに検査を受けて頂けます。
便潜血陽性を放置した場合の注意点
「次の健診まで待てばいいか」「症状がないから大丈夫」と先送りにするのは大変危険です。
例え、便潜血検査が陽性になって数年放置していた場合でも、一度ご相談ください。便潜血検査の陽性に時効はありません。大腸カメラで精密検査を受けていない場合は、すぐに精密検査の案内を致します。
精密検査を受けない人が多い現実
30%もの人が「要精密検査」になっても受診していただけないことが、どの自治体でも大問題になっています。
受診しない理由の上位は「痔の出血だと思った」「病院に行く時間がない」「がんが見つかるのが怖い」という内容です。しかし、怖いからこそ、早い段階でしっかり調べることが大切です。
放置するリスク―症状が出てからでは遅い
便潜血陽性でも無症状の段階で精密検査を受けて早期に大腸がんが発見された人より、便潜血陽性でも放置し、目に見える血便や急な便秘・下痢・腹痛などの症状が出現してから検査を受けて大腸がんが発見された人で死亡リスクが約5倍も高い、というデータがあります。
「症状がないから安心」ではなく、「症状が出る前に動く」ことが命を守ることにつながります。
大腸がんのリスクを高める要因
以下の項目に複数当てはまる方は、特に注意が必要です。
- ①50歳以上
- ②大腸がん・大腸ポリープの家族歴
- ③高カロリー摂取および肥満
- ④過量のアルコール摂取
- ⑤喫煙は大腸がんの危険因子ですので、心当たりがある方は必ず大腸カメラを受けましょう。
若い世代(20〜40代)でも炎症性腸疾患や遺伝性大腸がん症候群のリスクがあります。年齢で「まだ自分には関係ない」と判断しないことが大切です。
実際の患者さんの事例
【患者Aさん(30代・男性会社員)の場合】
会社の健康診断で便潜血が陽性と判定されたものの、「痔があるからだろう」と1年間放置していました。翌年も陽性が続いたことで来院。大腸内視鏡検査を実施したところ、10mm程度の腺腫性ポリープが発見され、その場で切除しました。病理検査の結果は良性でしたが、放置していればがん化するリスクのある病変でした。「もっと早く来ればよかった」と患者さんもおっしゃっていました。
【患者Bさん(40代・女性)の場合】
健康診断で2年連続の便潜血陽性を受け、「そろそろ診てもらわないと」と来院されました。大腸内視鏡検査で粘膜に炎症が見られ、潰瘍性大腸炎と診断。早期に治療を開始できたため、症状は良好にコントロールできています。若い世代でも炎症性腸疾患は決して珍しくありません。
【患者Cさん(30代・女性)の場合】
30歳前半のまだ若い女性でしたが、便潜血検査が陽性になったため当院を受診されました。精密検査で大腸カメラを実施したところ、外科手術の適応となる進行大腸がんを認めました。詳しくお話を伺うと、直系の家族に大腸がんの既往があったとのことです。外科的手術で問題なく切除が完了しました。若年の大腸がんが増えてきているため、例え若い方でも大腸カメラでの精密検査が必要だと痛感しました。
まとめ(総括)
便潜血陽性の結果を受け取ったときに知っておきたいポイントを整理します。
- 便潜血陽性は【大腸がん確定】ではありません。陽性者の約3%にがんが見つかる一方、大半は痔やポリープ、炎症などが原因です。ただし、原因を特定するための精密検査は必須です。
- 受診すべき科は【消化器内科(胃腸内科)】、検査は【大腸内視鏡検査(大腸カメラ)】が標準です。
- 「1回だけ陽性だったから大丈夫」「痔だから問題ない」という自己判断は禁物です。1回でも陽性になったら、精密検査として大腸内視鏡が必要なのです。
- 鎮静剤を使えば検査時の苦痛は大きく和らぎます。「怖い」「痛い」という先入観で足が遠のいている方こそ、まずは一度ご相談ください。
- 大腸がんは早期に見つけられれば無症状のうちに切除し、治癒することが可能です。早期発見のためにも、陽性の通知を受け取ったら速やかに受診することをお勧めします。
当院について
広島八丁堀内科・胃腸内視鏡クリニックは、広島市の中心部・八丁堀エリアに位置する消化器・胃腸内視鏡専門のクリニックです。
当院の大腸内視鏡検査の特徴
- 日本消化器内視鏡学会専門医が全件の大腸カメラ検査を担当しています。豊富な症例経験により、腸のひだの裏側や屈曲部といった見落としやすい箇所も丁寧に観察します。
- 鎮静剤を用いた検査に対応しており、うとうとした状態で検査を受けていただけます。「過去に大腸カメラで苦しかった」という方もお気軽にご相談ください。
- 検査と同時にポリープが見つかった場合、条件を満たすものは当日切除(日帰りポリープ切除)に対応しています。入院の必要なく、治療まで一連で完結できます。
- 過去の大腸カメラで奥まで観察ができなかった方でも一度ご相談ください。適切な前処置と鎮静剤の使用で大腸カメラを完遂することが可能になることもあります。
「便潜血陽性」の方の受診の流れ
まず外来受診(問診・診察)でご状況をお聞かせください。検査日程を調整し、大腸カメラの前処置の方法や注意事項を丁寧にご説明します。
当日は専用フロアでの院内での前処置にも対応しています(ご希望の方)。
検査後はリカバリースペースでゆっくりお休みいただき、担当医から結果説明を行います。ポリープが見つかった場合はその場でご報告し、今後の治療方針についても丁寧にご案内します。
お電話・WEB予約を受け付けています
平日はもちろん、毎週土曜日の診察・検査にも対応しています。「仕事が忙しくて平日は動けない」という方もぜひご活用ください。便潜血陽性の結果用紙をお持ちの方は、受診の際にご持参いただけるとスムーズです。
健康診断の結果を「また来年確認すればいい」と先送りにしないために、私たちは広島の皆さんの身近なかかりつけ医として、一歩踏み出すサポートをしています。便潜血陽性でお悩みの方、不安な方は、どうぞ当院へお気軽にご相談ください。


